(※写真はイメージです/PIXTA)

令和6年度診療報酬改定において、特に注目すべきは「生活習慣病管理」の項目です。内科をはじめ、多くの診療科で大きな影響をもたらす内容です。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

特定疾患の対象疾患の見直し

令和6年度の改定議論のなかで、生活習慣病患者の管理について「生活習慣病管理料」と「特定疾患療養管理料」の内容が似通っているという指摘がありました。そこで、特定疾患療養管理料の対象疾患から、生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧症)を除外することで、生活習慣病管理料に一本化することとなりました。

 

また、この対象疾患の変更は「特定疾患処方管理加算(66点から56点に引き下げ)」についても同様となっています。

 

さらに「特定疾患処方管理加算」については、特定疾患処方管理加算1(14日以内)を廃止するとともに、特定疾患処方管理加算2(28日以上)の評価を見直し、28日超処方だけではなく、リフィル処方箋を発行した場合も算定が可能となります。

生活習慣病管理料を2区分に

一方、「生活習慣病管理料」については、検査等の包括の有無により、生活習慣病管理料(Ⅰ)および(Ⅱ)と2区分となりました。

 

●生活習慣病管理料(Ⅰ)

1 脂質異常症を主病とする場合 610点

2 高血圧症を主病とする場合 660点

3 糖尿病を主病とする場合 760点

※ 検査等を包括する場合

 

●生活習慣病管理料(Ⅱ) 333点

※ 検査等を包括しない場合

 

生活習慣病管理料における主な変更点としては、

 

①療養計画書を簡素化

②電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は血液検査項目の記載を不要

③患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに療養計画書の記載事項を入力した場合は、療養計画書の作成及び交付をしているものとみなす

④少なくともひと月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件を廃止しおおむね4ヵ月に1回の管理に変更

⑤外来管理加算の併算定が不可

 

があります。

特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料の算定プロセスの違い

特定疾患療養管理料から生活習慣病が除外されたことによって、生活習慣病管理料への算定変更が必要となります。しかしながら、2つの点数は算定要件が大きく異なるため、簡単に変更できるわけではありません。

 

特定疾患療養管理料の算定要件は、200床未満の病院又は診療所において、特定疾患を主病とする患者に対して、治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理を行った場合に、月2回に限り算定できるもので、管理内容の要点を診療録に記載することが求められています。

 

一方で、生活習慣病管理料の算定要件は、200床未満の病院又は診療所において、生活習慣病を主病とする患者に対して、患者の同意を得て治療計画を策定し、治療計画に基づき、生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合に、月1回に限り算定できます。

 

管理については、服薬、運動、休養、栄養、喫煙及び飲酒等の生活習慣に関する総合的な治療管理を行う旨を患者に対して「療養計画書」により丁寧に説明を行い、患者の同意を得るとともに、計画書に患者の署名を受けた場合に算定できるとしています。

 

特定疾患療養管理料は、管理内容の要点をカルテに記載するだけで算定できるのに対し、生活習慣病管理料は、療養計画書を作成し、患者へ説明し、同意の署名が必要となるのです。つまり、算定に当たっての医療機関側の手間が大幅に異なるのです。また、療養計画書の作成に当たっては、医師の負担が大きくなるため、看護師や、栄養士などの協力体制が必要となります。

外来データ提出加算の算定も視野に

生活習慣病管理料については、厚生局に届け出たうえで、

 

①保険医療機関における診療報酬の請求状況

②生活習慣病の治療管理の状況等の診療の内容に関するデータ

 

を継続して厚生労働省に提出している場合に「外来データ提出加算」として50点を加算できるとしています。

 

同加算を算定するには、データを作る必要がありますが、その手間を乗り越えることができれば、点数のマイナス分をカバーすることが可能になります。

 

算定に関する詳細な情報は今後出てくると思われますので、一度電子カルテメーカーと相談の上、算定できるか検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料へのスライドをスムーズにするため、療養計画書をいかに効率よく進めるかがカギとなります。

 

療養計画書は今回簡素化が図られており、療養計画書の患者署名についても、初回は必須ですが、2回目以降に用いる継続用に「患者が療養計画書の内容について説明を受けた上で十分に理解したことを確認した」という項目が新設され、「上記項目に担当医がチェックした場合については患者署名を省略して差し支えない」とされています。

 

また、施設基準において「患者の治療管理において必要な項目のみを記載することで差し支えない」とされており、全部の項目を埋める必要がないことが分かります。

 

クリニックにとっては、療養計画書の作成に手間取れば、待ち時間の延長につながる問題です。院内のスタッフを集めて、どういう体制で書類作成を行うか、6月の算定に向けて早めに準備する必要があると考えます。

 

 

大西 大輔
MICTコンサルティング株式会社 代表取締役

※本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。