十分な広さのある脱衣所の設置が望ましい
皮膚科は基本的に、湿疹、アトピー性皮膚炎、水虫、うおのめ、帯状疱疹(ほうしん)、脱毛症、乾癬(かんせん)といった皮膚トラブルに関連する症状の診察・治療を行います。衣服で覆われている部位を診察するケースも多いことから、患者様のプライバシーの確保には十分な配慮が必要だといえます。
その観点からクリニックのレイアウトを考えると、診察前後の衣類の着脱がしやすく、患者様の手荷物も置くことができる、十分な広さのある脱衣所の設置が望ましいといえます。さらに、そこから診察室までの動線も、できるだけ短くできればなおいいでしょう。
センシティブな診療に最大限の配慮を
皮膚科領域の病気には、症状が現れる身体部位だけでなく、病気の種類自体にもかなりセンシティブなものもあり、患者様のなかには、罹患している具体的な病名を知られたくないと、強く思われている方も少なくありません。
たとえば、クリニック内に複数の診察室があり、それぞれの担当医師によって診察内容におおよその見当がつくような場合、診察室への出入りの際に周囲の目が気になってしまいます。それに加え、診察室の仕切りの上部が開口している構造だったり、診察室と待合が接近したレイアウトだったりすると、患者様は会話内容が外に漏れ聞こえるのを危惧し、詳細な病状を伝えることをためらい、適切な診療を受けられないこともありえます。
そのためにも、最大限患者様のプライバシーに配慮したレイアウトが望まれます。
具体的には、待合室から見て、どの診察室に入室するのかがわかりにくいレイアウトにする、診察室内の会話が外へ筒抜けとならない構造にする、といったことがあげられるでしょう。
美容皮膚科領域へ進出するクリニックも増加傾向
これから皮膚科クリニックを開業する場合、経営サイドに留意していただきたいのが、近年特に顕著となっている「保険診療の皮膚科」と「自由診療の美容皮膚科」の垣根の低下です。
皮膚科は基本的に、皮膚に関する症状全般の診察・治療を行うところであり、そのほとんどは保険診療です。
それに対して美容皮膚科は、眼瞼下垂症治療やさかさまつ毛の修正を目的とした二重整形、事故や病気などの傷痕の治療など、機能回復を目的としたものには保険診療が認められていますが、フェイシャルエステや医療脱毛といった、美容に関する領域については、大半が自由診療です。
美容皮膚科への進出を視野に入れる場合の注意点
最近では、一般的な皮膚科クリニックのなかにも、フェイシャルエステや医療脱毛を取り扱うケースも増えてきました。
しかし、すでに一般的な皮膚科クリニックとして運営されていたところが、あとから美容診療を行う場合、かなりの大きさがある専用機械を後付けで設置し、さらに施術のためのスペースも確保しなければなりませんし、患者様がお化粧を落とすなどするための水回りの設備も必要になります。
しかし、一度レイアウトを固め、スタッフもその環境に慣れているところへ、大幅なレイアウト変更や水回りの増設を行うのは大変です。リフォームはかなり大がかりなものとなりますし、費用も高額となってしまいます。
もし、これから皮膚科クリニックの開業を検討される場合は、将来の展望を踏まえ、皮膚科の医療のみに特化するのか、それとも将来的に美容皮膚科領域への進出も視野に入れるのかをぜひよくお考えください。
保険診療と自由診療…インテリアへの着眼点も異なってくる
皮膚科クリニックのインテリアや内装の雰囲気は、保険診療であるか、自由診療であるかで少し異なってきます。
保険診療の場合は、患者様の気持ちを和らげて落ち着かせる内装デザインが第一選択肢になるでしょう。
ほかの診療科目も同様ですが、やはり、病気で来院される患者様は不安を抱えて緊張し、気分も沈みがちとなっています。そのような気持ちに寄り添うための、視覚からのアプローチも必要です。
清潔感があることは大前提ですが、インテリアの配色も、パステルカラーなどのソフトな色合いや、自然を感じさせる木目などのナチュラルテイストをベースとするのがいいでしょう。スペースの兼ね合いもありますが、観葉植物などを活用するのもおすすめです。
自由診療とする場合は、来院するお客様の趣向をリサーチし、ゴージャスな雰囲気を演出するケースもあります。待合のソファをシックで豪華なものにしたり、照明を蛍光灯ではなくシャンデリアにしたりすることもあります。美容領域を検討する場合は、担当する設計会社としっかり打ち合わせ、院長の描くイメージを伝えるようにしましょう。
いずれの場合も、院長が今後の方向性をしっかり見定めることが、まずは重要だといえるでしょう。
株式会社Metal Design