(※写真はイメージです/PIXTA)

クリニックを運営するにあたり、診療科目に適した設計や内装が必要です。診療科目ごとに注意すべきポイントについて、クリニックの建築にくわしい建築士が解説します。今回は整形外科クリニックを取り上げます。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

整形外科クリニックと切り離せない「リハビリテーション施設」

整形外科は「運動器」という領域の病気を扱います。運動器とは、身体を動かすことに関わる骨や筋肉、関節、神経などを指します。

 

整形外科は、ほかの診療科目に比べてクリニックの床面積を広く取る必要があります。

 

なかでも大きなポイントになるのが、リハビリテーションの施設をどうするかです。リハビリテーション施設を設置する場合、リハビリルームを45m2以上とする必要があります。

 

整形外科に限らず、病院で行われるリハビリテーションには3つあります。理学療法士が行う「理学療法」、作業療法士が行う「作業療法」、そして言語聴覚士が行う「言語聴覚療法」です。このうち整形外科で扱うのが「理学療法」と「作業療法」です。

 

したがって、整形外科を開業するにあたっては、リハビリテーションの有無に加え、理学療法士と作業療法士を何名雇用するのかによって、床面積の広さも変わってきます。

スマートな診察・治療には、スムーズな動線確保が必須

整形外科を訪れる患者様のなかには、単に診察を受けに来た方もいれば、リハビリテーションを受けに来た方もいます。

 

患者様のクリニック内の動線は「来院→待合室→診察室」「来院→待合室→診察室→リハビリテーション施設」「来院→リハビリテーション施設」というように、患者様の病状に応じてバラバラです。そのため、狭いクリニック内で複数の動線が混在すると、患者様の移動に大きな支障を来すことになります。

 

前述したように、整形外科は運動器に関わる病気の治療を行います。もちろん、ひとりで来院し、ひとりで診察室等を行き来できる方もいらっしゃいますが、歩行困難で付き添いが必要な方も、車いすでの移動が必要な方もいらっしゃいます。

 

そうなると、待合室や廊下もゆったりとした設計が求められます。それに加え、動線が混乱を来さないよう、わかりやすいレイアウトも考えなければなりません。

 

さらには、患者様がご高齢だったり、運動障害があったりして、ご自身で受付手続きを行えないケースも想定されます。その場合は、付き添いの方が患者様に代わり、書類への記入や支払いを行うことになりますが、それを見越したうえで、受付カウンターの周囲にスペースを取るなどの配慮も必要です。

 

実に細かいことではありますが、そのような行き届いた配慮によって、クリニックの評判も大きく変わってくるのです。

ターゲットは高齢者? それとも働き盛り?

クリニックのレイアウトは、どのようなクリニックを目指すのかによって変わります。

 

レントゲン室は必須となりますが、高齢者の患者様をターゲットとする場合、どちらかというと、身体機能の回復より、痛みを緩和する治療が中心になり、導入を検討する機械も、電気刺激治療機器や、ウォーターベッド型マッサージ器等が検討されるでしょう。

 

年齢が比較的若く、交通事故やスポーツのけがによる後遺症のある方、あるいは働き盛り世代をターゲットとする場合は、身体機能を回復させ、日常生活に戻ることが目的となるため、運動療法機器の導入が検討されると思われます。

 

もちろん、どの診療科のクリニックでも、開院を検討する際には慎重な調査が行われますが、とくに整形外科の場合、最初から面積の確保が求められ、各種の治療機器の導入が必要となることから、ターゲットの見極めのミスは致命傷になってしまいます。

 

働き盛りの年代を想定したはずが、いざフタを開けてみたら高齢者ばかり…となれば、せっかく導入した高額な機器が生かせないという、困った事態にもなりかねません。もちろん、逆もしかりです。

内装のテーマカラーは「元気の出る色」を中心に

超高齢社会となった日本では、整形外科へのニーズは一層の高まりを見せています。

 

それだけに、内装は高齢者への一層の配慮が求められます。清潔感を感じさせることは大前提ですが、整形外科の場合はとくに、気分を明るくする効果の高い、オレンジと白の配色が好まれます。

 

クリニックの開業にあたっては、設計会社は常にドクターが思い描くレイアウト、内装が実現できるよう、ヒアリングを重ねて伴走することになります。ドクターからも積極的に要望や希望を伝えるようにして、双方の意思疎通を図りつつ、理想のクリニック建築を実現させていってください。

 

 

株式会社Metal Design