夫婦で月20万円の年金で質素ながらもささやかな老後生活を送っていた柳沢夫婦(仮名)。しかし、夫に起こった「まさかの出来事」により、妻がひとりのこされてしまいました。夫の逝去にともない、受け取ることのできる年金が大きく減少することを知った妻は、ひどく憔悴。妻の美帆さんに解決策はあるのでしょうか。FPの辻本剛士氏が、事例をもとに解説します。
年金〈月20万円〉もらえるはずが…65歳夫の急逝で受給額が激減。「もう、生きていけない」憔悴する59歳妻を救った、年金事務所職員のひと言【FPが解説】
幸せな老後生活を送っていた夫婦に起こった「まさかの出来事」
柳沢雅史さん(仮名・65歳)は、妻の美帆さん(仮名・59歳)と2人で暮らしています。
雅史さんは長年、中小企業の営業職として全国を飛び回る生活を送り、定年時には退職金として1,000万円を受け取りました。
一方の美帆さんは専業主婦として家庭を守ってきましたが、マイペースで金銭感覚が少し緩い性格であったため、夫が定年を迎えるまでにできた貯蓄額は300万円ほど。夫婦の総資産額は、約1,300万円あります。
現役時代は、転勤が多かったことから雅史さんの社宅に美帆さんがついていく形でしたが、定年後は家賃9万円の賃貸住宅に引っ越し、現在もそこで2人暮らしをしています。
年金を受け取り始めて約1年が経過。受給額は月20万円です。現役時代の収入よりは少ないものの、2人は仲が良く、夫婦で散歩や町内の集まりに出かけるなど、質素ながらも安定したセカンドライフを過ごしていました。また、今後についても「年に1度は旅行に行きたいね」と計画を立てていたところでした。しかし……。
夫が脳梗塞で突然の逝去…のこされた妻の「絶望」
そんなある日のことです。雅史さんが脳梗塞で倒れ、還らぬ人となりました。前の日まで元気だった雅史さんの突然の逝去は、美帆さんにとって完全に予想外の出来事です。心身ともに憔悴した美帆さんでしたが、家族の助けもありなんとか葬儀や相続などの手続きを終えました。
夫の死後、妻が受け取れる年金額は大幅に減額
少しして、家計を支えていた夫を失ったことで今後の生活が心配になった美帆さんは、詳しい年金受給額について自分なりに調べてみることにしました。
まず、いままで受け取っていた年金月20万円の内訳は、下記のとおりです。
・老齢基礎年金……月額6万6,250円(年間79万5,000円)
・老齢厚生年金……月額11万7,000円(年間140万円)
・加給年金……月額1万9,000円(年間22万8,700円)
合計……月額20万2,250円
しかし、調べてみたところ、美帆さんが今後受け取ることになる遺族厚生年金は夫が生前受け取っていた老齢厚生年金140万円の3/4になるため、105万円(月額8万7,500円)となるようです。
さらに、遺族基礎年金は「18歳未満の子どもがいること」が条件ですが、柳沢家はこれに当てはまらないため支給対象外となり、ゼロ円であることが判明しました。
これはつまり、これまで月20万円で暮らしていたところ、月わずか8万7,500円で生活しなければならないということです。「愛する夫を失ったうえ、これっぽっちの金額しか受け取れないなんて。もう、生きていけない……」美帆さんはひどく落ち込んでしまいました。