定年前の熟年離婚。今まで築いた財産はどのように分ける?

事例

定年まであと1年を切ったAさん(59歳)。貯蓄は平均以上で持ち家もあり、退職金と年金は人並みに貰えそうなので、定年後の生活に経済的な不安はありません。

Aさんは不動産会社の営業として家庭を顧みることなくバリバリ働いてきました。定年後は罪滅ぼしの気持ちから週3日程度の勤務にして、妻(Bさん)とのんびり過ごそうと考えています。

仕事の合間にスマホで観光名所のツアーを探したり、評判の良いレストランを調べたりすることが最近の日課。定年後を考えると楽しくて仕方ありません。

しかし...

いくつかの旅行プランを妻に提案したところ、返事の代わりに差し出された1枚の紙。

まさかの熟年離婚を突き付けられて、Aさんは唖然とするばかりです。

夫婦で築いた財産は公平に分けられる

熟年離婚は珍しくありません。

厚生労働省「令和4年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、令和4年の離婚件数は17万9,096組となりました(同居期間不詳を含む)。

同居期間別の離婚件数をみてみると、熟年離婚と思われる同居期間20年以上の離婚件数は38,990組。離婚件数に占める割合は決して低いとはいえません。

参考:厚生労働省「令和4年人口動態統計月報年計(概数)の概況」

通常、離婚時には財産を分けることになりますが、財産分与には3つの性質があるとされています。

①夫婦の財産関係の清算

②離婚後の生活に困窮する配偶者の扶養

③離婚に伴う損害賠償(慰謝料)

なかでも①が中心であると考えられているので、ある財産がたとえ夫婦どちらか一方の名義になっていたとしても、お互いの協力によって得たと評価できる財産は分与の対象となります。

では、Aさんの退職金や年金はどうでしょうか?