仕事内容を細かく棚卸しすれば、隠れた自分の「強み」がわかる

ここで、みなさんもちょっと考えてみてください。Tさんは、本当に「記者しかできない」のでしょうか。記者は、本当に「潰しが効かない仕事」なのでしょうか。Tさんの「才能を活かせる職場」は、本当に新聞社だけでしょうか。

答えは、もちろん「いいえ」です。断固としてお伝えしますが、決してそんなわけはありません。Tさんは、ご自身の宝物、経験知や才能に長年気づかず、自己分析できていないだけです。

それでは、Tさんの経験知を棚卸しして才能を分析してみましょう。

【Tさんがしてきた仕事】

・地方新聞社の社員

・地方新聞社の記者

・地方新聞社の課長

 

【Tさんがしてきた仕事で蓄積されている無形資産】

※ 無形資産:知識・スキル・コンピテンシーという見えない資産のこと

 

(1)知識

・新聞社の業務全般に関する知識

・編集部門の業務全般に関する知識

・印刷に関する業務知識

・情報の収集データ

・分析に関する知識

・これまで記事を書いてきた、さまざまな業界に関する知識

・これまで取材した、取材先の業務に関する知識

・これまで取材した、地域

・地方に関する知識

・課長という役職に関する知識

・記者という仕事に関する知識 etc.

 

(2)スキル

・新聞をつくるスキル

・見出し(キャッチコピー)をつくるスキル

・記事を書くスキル

・文章を構成するスキル

・文章の要点をまとめるスキル

・文章を校正するスキル

・情報を収集するスキル

・情報の真偽を見極めるスキル etc.

 

(3)コンピテンシー

・取材し記事を書くという真摯な姿勢

・事実に基づいて記事を書くという誠実さ

・取材先に記事を書くことを受け入れてもらえるという信頼感

・課長として、部下を育成する責任感

・新聞を編集する際、全体のバランスを考えるバランス感覚

・取材する際、真偽を確かめる、いい意味のクリティカルさ etc.

さて、みなさん、いかがでしょうか。Tさんが、「記者以外の仕事」ができる可能性は無限にあると感じませんか。これらの才能は、仕事をするうえで、年齢面にはまったく関係ないもの(知識・スキル・コンピテンシー)ばかりです。

こんなふうにご自身が経験してきた仕事の内容を細かく棚卸しすれば、誰しも今の仕事・肩書・役職以外に多様な仕事ができる可能性を持ち合わせているのです!


田原 祐子
人材開発コンサルタント/ナレッジ・マネジメント研究者