家族が認知症になったらどのように接したらいいのでしょうか? 理学療法士の川畑智氏による著書『ボケ、のち晴れ 認知症の人とうまいこと生きるコツ』(アスコム)では、伝え方や接し方がまとめられています。この回では、会話についてのコツをご紹介しましょう。
会話はひとつずつ、言葉の列車は4両まで
認知症の方との会話のコツは、言葉の入力数を少なくすることです。
「○○さん、□□しますよ」というところで区切りましょう。それが終わったタイミングで「次は△△しましょうね」というように、1つひとつ伝えていきます。
さらに、1回あたりの単語の使用は4語以内が理想です。
「○○さん 血圧 測りますよ」
「○○さん お風呂 入りましょう」
「お昼ご飯は 焼き魚です」
口から出発する言葉の列車は、4両編成まで。
一連の流れですべて伝えてしまうと、頭の働きが苦手になった人には理解が追いつかず、不安しか残りません。
もうひとつ気をつけたいのが、会話の「速度」です。
認知症のリスクのある方や、MCI(軽度認知障害)の方には、私たちが思っているよりもゆっくり話さないと、1つひとつの単語がしっかり頭に届きません。
ゆっくり、一語一語区切って話すこと。読点ではなく句点を使って話すくらいの余裕が必要です。さらに重要なのは、会話の中にジェスチャーを加えること。
食べる話なら食べる身振り、お風呂なら頭や体を洗う身振りを加えることで、視覚的な情報が脳に届き、会話の理解をうながしてくれます。
きょとんとしたり、ぽかんとしたり。理解が追いつかないことへの不安から、ソワソワ、イライラしたり、ウロウロ、キョロキョロ目が泳ぐなどの落ち着かない動作は、あなたの言葉が「脳に届いていない」サインかもしれません。
認知症の人とは異なる世界に日常がある私たちは、ついついいつものクセで、普段どおりの話し方をしてしまいます。言葉を重ねすぎていないか、話すスピードが速すぎないか、一度立ち止まって、振り返ってみてください。
それがお互いの晴れ間を増やすことを、私は大森さんから教わりました。
川畑 智
理学療法士