不動産を買う人は高齢化し、十分なお金を持っている

新築マンションの価格はこの20年で大きく上昇しているが、その主な理由は以下のようなものになるだろう。

まず、購入者が高年齢化していることが挙げられる。国土交通省の住宅市場動向調査によれば、2019年の分譲マンション購入者のうち40歳以上の比率は49.1%で、e-Stat(政府統計の総合窓口)に掲載されているデータで最も古い2006年の38.0%から10ポイント以上増加している。

購入者の平均世帯年収は、2006年が709万円で、世帯年収800万円以上の世帯比率は26.3%だった。これが2019年には平均世帯年収が798万円に上がり、世帯年収800万円以上の世帯比率が35%以上に増えている。これは全国平均なので、首都圏に限れば平均年収はもっと高くなるだろう。

購入者の属性が変わったことに加え、新築物件の変化も影響している。大きいのは、タワーマンションの増加だ。共用部が充実し、価格が高めに設定されることが多いタワーマンションが増えたのは1997年の高層住居誘導地区の設定後で、2009年には首都圏の新築マンション供給の半数はタワーマンションとなり、2019年でも25%以上となっている。

断熱性能、遮音性能等に大きく影響するサッシの1990年代以降の性能向上も著しい。

一般社団法人板硝子協会の調査によれば、1997年時点では新築共同住宅への複層ガラスの戸数普及率はわずか11.5%だったが、2019年には85.7%まで上昇している。2000年にはいわゆる新・新耐震基準が導入され、基本構造の性能向上、サッシ以外にも住宅設備の性能向上、品質向上などがあり、住宅品質自体も向上しているが、同時にコストも増加しているわけで、当然価格に反映されている。

さらに、新築マンションの供給自体が大きく減少している。不動産経済研究所のデータによれば、新築マンションの供給は1999年に全国で16万2744戸(首都圏8万6297戸)あったが、2009年はリーマン・ショックの影響で全国7万9595戸(首都圏3万6376戸)と大きく減少し、2019年も全国で7万660戸(首都圏3万1238戸)と2009年を下回っている。新築マンションの供給数自体が20年前と比べて半減しているため、売り手市場になっているのだ。