「年金で資産形成ができたのに」後悔していたAさんだが…

Aさんは念のためにと、国民年金を毎月納付した時の受給額について知りたいとのこと。そこで、筆者が令和5年度の保険料と受給額で計算してみました。

国民年金保険料を満額納付していれば、年間79万5,000円を受給できます。Aさんの受給額との差は35万7,750円です。65歳の女性の平均余命24.30年で考えると、90歳までの25年間で864万3,750円の差額が生じます。

国民年金保険料は月1万6,520円です。Aさんが納付しなかった18年分に換算すると、総額は356万8,320円となります。いまさらどうしようもないことですが、未納期間分の保険料を納付しておけば、納付額の約2倍超も受給できたことになるのです。

また、国民年金を満額の79万円5,000円受給しても、年金生活者支援給付金制度の支給条件に合致すれば、給付金も支給されます。

なお、もし40年間に達するまでの期間分を、60歳以降も国民年金に任意加入して保険料を納付していれば、Aさんは年金額の上乗せができていました。

ここまで聞いたAさんは、「まじめに払っていたら資産形成できていたのに……」と、若かりし頃の自分の行動を後悔しながらも「今回きちんと知れて良かったです。自分の状況をしっかり把握できたので、今後の対策をたてやすくなりました。まずはいま助けられている年金生活者支援給付金が支給されなくなるくらい、仕事を頑張って収入を増やしたいと思います!」と、気持ちを切り替えて前を向いていました。

Aさんの言葉どおり、自身の現状を正しく把握することは、将来の計画を立てるうえで非常に大切です。改定を重ねて複雑化した年金制度をすべて理解する必要はありませんが、自分に関係しそうな制度やトピックは、定期的にチェックしておくとよいでしょう。


牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員