国民年金保険料の納付金額は、65歳以降の年金受給額に反映します。会社員であれば自ら手続きする必要はほとんどないですが、無職の期間が長かったり自営業になったりした場合、“ついうっかり”未納のまま過ごし、支給がはじまってから後悔する人も少なくありません。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、具体的な事例を交えて解説します。

日本も捨てたもんじゃない…年金月6万円の65歳女性、年金機構から届いた“緑色のはがき”に歓喜のワケ【CFPの助言】
日本もまだまだ捨てたもんじゃない…Aさん歓喜の真相
年金機構から「緑色のはがき」で送られてくる給付金の申請書
また、Aさんから「年金とは別で、2ヵ月に1度口座に入金される5,654円はなんのお金でしょうか」との質問がありました。
この入金の正体は、「年金生活者支援給付金」といい、公的年金等の収入やその他の所得額が一定基準額以下の年金受給者の生活を支援するために、年金に上乗せして支給されるものです(厚生労働省HPより)。
この給付金も、日本年金機構に申請しなければ受給できません。
年金生活者支援給付金制度※の支給要件
※年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金受給者のほかに、障害基礎年金、遺族基礎年金の受給者にも対象者がいる。詳細は、厚生労働省の「年金生活者支援給付金制度について」を参照のこと。
「年金生活者支援給付金」の支給要件は次の通りです。
(1)65歳以上の老齢基礎年金の受給者である。
(2)同一世帯の全員が市町村民税非課税である。
(3)前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が87万8,900円以下※である。
※778,900円を超え878,900円以下なら、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される。
Aさんの場合、(1)(2)(3)すべてに該当していました。
年金生活者支援給付金の算出式は、次の①と②の合計額です。この制度も、老齢基礎年金の受給額と同様、未納分は減額されます。
【年金生活者支援給付金の算出式①+②】
①保険料納付済期間に基づく額(月額)
=5,140円※1×保険料納付済期間/被保険者月数480ヵ月
②保険料免除期間に基づく額(月額)
=1万1,041円または5,520円※2×保険料免除期間/被保険者月数480ヵ月
※1令和5年度の額
※2保険料全額免除、3/4免除、半額免除期間は11,041円(老齢基礎年金満額月額の1/6)、保険料1/4免除期間は5,520円(老齢基礎年金満額月額の1/12)とする。
Aさんに当てはめると、①の国民年金(厚生年金加入期間も含む)の保険料納付済期間は264ヵ月です。②は年金保険料の免除申請していないため0円です。つまり、
①5,140円×264ヵ月(22年)/480ヵ月=2,827円
と、年金生活者支援給付金が2,827円支給されます。ちなみにこの給付金は非課税です。
Aさんは、年金生活者支援給付金が月2,827円、合計毎月6万2,827円の2ヵ月分、12万5,654円の入金を確認しました。
入金の正体を知ったAさんは「ああ、そういえば年金機構から届いた緑色のはがきがありましたね。年金の申請書類といっしょに請求したのかな。金額にすると大きくはないけれど、年金生活の足しになるのはありがたい……日本もまだまだ捨てたもんじゃないですね!」と喜んでいました。
なお、支給要件を満たす場合、2年目以降の手続きは原則不要です。