配偶者の介護に疲れ…増える「熟年離婚」

年々、老老介護が進んでいます。厚生労働省の統計(2022年、国民生活基礎調査の概況)によると夫婦のみの世帯で要介護者がいる割合は25%(2022年)、10年前(2001年は18%)と比べ、3割も増えています。介護者の23%は同居の配偶者です。

もし、「夫婦だから助け合わなければならない」という暗黙の了解があるのなら、夫婦をやめる……つまり、離婚すればいいというのも一理あるでしょう。

近年、介護疲れは社会問題になっており、ニュースで事件に発展したケースを目にします。悲しい結末を辿るくらいなら「介護離婚」したほうがまだましかもしれません。実際のところ、熟年離婚(同居35年以上)は30年で5倍に膨れ上がっています(1990年は1,185組、2020は6,108組。厚生労働省の令和4年、人口動態統計特殊報告)。

では、どのようなケースは離婚に至るのでしょうか? 筆者の相談事例をもとに解説しましょう。

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また病名や財産の内容、離婚の経緯などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

50代で介護状態となった夫

<家族構成と登場人物の属性(すべて仮名、年齢は相談時点)>

夫:宮本裕(59歳)会社員、年収600万円(月収50万円) ※今回の相談者
妻:宮本志保(56歳)専業主婦
子:宮本帆奈(29歳)

<裕さんの財産の内訳と合計(約5,050万円、年金除く)
預貯金 450万円
戸建ての持ち家 2,600万円(住宅ローン2,000万円)
生命保険 1,200万円
退職金 800万円
厚生年金 毎月14万円(60歳から繰上げ受給したとして)

「家内に……捨てられ、金も……とられ、もう散々ですよ……」

裕さんは筆者の事務所に電話をかけてきたのですが、そんなふうに裕さんは妻への恨みを言葉にしました。その声は小さく、途切れ途切れで、弱々しい印象でした。なぜでしょうか? 

――裕さんにはまだある病気の後遺症が残っていたのです。まず、35年間の結婚生活はどのようなものだったのでしょうか? 裕さんが振り返ってくれました。