離婚した父親の半分以上は養育費を支払ったことがない

離婚届の書式が12年前に変更されたことを知っていますか? 

夫婦のあいだに未成年の子どもがいる場合、夫と妻のどちらが子どもを引き取るのか……親権を決めなければ離婚することができません。12年前まで離婚届には親権者をチェックする欄しかありませんでした。しかし、2024年の離婚届には親権者に加え、「養育費、面会交流の取り決めがあるかどうか」とチェックする欄が増えています。

非親権者は親権者に対して養育費を支払う義務がある一方、子どもとの面会を求める権利があります(民法766条)。これらを決めずに離婚する夫婦がいかに多いか。離婚届の書式がそのことを物語っているでしょう。

実際のところ、統計(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)によると母子家庭のうち、養育費を現在も受け取っているのは28%、一度でも受け取ったことがあるのは14%しかいません。一方、一度も受け取ったことがないのは57%に達しており、つまり半分以上の父親は養育費を支払ったことがないことを意味します。

さらに上記の統計によると養育費の取り決めをしたのは全体の46%、約束を書面化したのは35%しかいません。離婚届にこのようなチェック欄があるにもかかわらず、半分以上の夫婦は養育費の取り決めをしていないのです。取り決めの少なさは養育費の受給率の低さと比例しています。

もちろん、養育費を払わない、取り決めもしない、書面に残さない父親は批判されるべきです。どんな理由があれ、親子間には扶養義務があるのだから、養育費を払わなければならないのは当然です。養育費をもらえないせいで子どもは経済的な不利益を被っているのですから。

本来、支払って当たり前の養育費だが…

そのため、養育費を支払っている、もう半分の父親について焦点を当てることが憚られてきました。「払って当たり前でしょう!」という感じで特に褒められることはありません。筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、離婚時に決められた養育費を最後まで支払うことは決して簡単なことではありません。

途中で収入の減少、両親の世話(介護等)、住宅ローンの金利上昇などの困難に見舞われることもありますし、そもそも離婚したい一心で無理な金額を約束してしまったケースもあります。養育費の金額が身の丈に合わなくなった場合、どうすればいいのでしょうか? 

今回は役職定年により年収が4割も減少したタイミングで子どもが大学に合格。大学の入学金等で160万円を請求され、ほうほうの体で相談しに来た慎之介さんの事例を紹介しましょう。

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また家族の構成や年齢、離婚の経緯や養育費、学費の金額などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。