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【オープンハウスのアメリカ不動産投資セミナー】
投資家リスクにもつながる深刻な在庫不足
アメリカでは長らく住宅不足が続いており、それによって住宅価格が上がり続けています。というと、不動産投資家にとってはいいことのように感じるかもしれませんが、そうとばかりも言い切れません。
まず、購入物件の候補が減るため、条件の選り好みがしづらくなります。取得コストも上昇しているため、最低投資額が大きくなり、賃貸に出す際の利回りも低下します。さらに、売却価格や家賃価格の水準が買い手や借り手の収入水準と乖離することで、売りそびれや空室のリスクが増大します。
それでも価格上昇ペースが維持されさえすれば売却時には回収できるのですが、その保証もありません。経済が深刻な不況に陥って買い手が激減したり、在庫不足が急速に解消されると、価格も急落するかもしれないです。投資家のリスクを減らす意味でも、過度な在庫不足は是正し、需給バランスを取ることは重要です。
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ロビー活動や献金により、住宅の売買への補助政策を増やす
不動産ビジネスに従事する立場の人々にとってみれば、住宅在庫不足は明確にマイナスです。価格が上がって一回あたりの利益は大きくなるかもしれませんが、売り物が減れば取引回数も減るため、結果的には市場が小さくなるからです。そのため、全米不動産協会(NAR)は住宅不足解消に向けて、官民両側から様々な働きかけを行っています。
まず政府・政治家に対しては以下のようなアプローチをしています。
1.政策フォーラムの開催
上下院の議員を招いた政策フォーラムや公聴会を開催し、不動産業界の課題について議論し、解決策を提案します。例えば、2024年の2月8日には、インディアナ州代表の上院議員であるトッド・ヤング氏を招き、住宅在庫と価格について議論しています。
2.立法提案の支持
住宅価格を買い手の収入水準に合わせるため、住宅市場の健全な発展を促進する法案を積極的に支持します。例えば「More Homes on the Market Act(キャピタルゲイン税免除範囲の拡大施策)」のような、住宅供給の増加を促す法案を支援しています。支援には、政治行動委員会(PAC)を通じた資金提供も含まれます。
3.教育と啓蒙活動
政治家や学者に対して、不動産市場の動向データを提供するとともに、住宅所有の利点、および業界が直面している課題について教育と啓蒙活動を行います。
こうしたアプローチは、本質的には業界利益を確保するためのアクションで、必ずしも在庫不足だけをテーマにしたものではありませんが、業界が長らく悩み続けている重要課題であるため、在庫についてにアクションが多分に含まれます。
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民間企業とも連携し、技術革新を図る
さらに、NAR会員内や外部の民間企業とも協調し、以下のような活動を行っています。
1.特定技術分野への支援
建設をプロセスをスムーズにして在庫を増やしたり、事前成約を促すことで少ないリスクで着工できるようにしたりするための技術について、出資や会員への奨励などを行っています。以下はその例です。
■デジタル建築・設計ツールの開発
不動産開発プロジェクトの計画と設計を加速するためのデジタルツールやソフトウェアの開発を支援します。建設プロジェクトの効率化が図られ、より迅速に新しい住宅を市場に供給できるようになります。
■仮想現実(VR)と拡張現実(AR)
VRやARを使用して、未建設の住宅プロジェクトや改修前の物件の仮想見学を可能にします。事前の販売や賃貸が促進され、建設資金を調達しやすくなるため、着工速度が速まります。
2.特定企業とのパートナーシップ
1は技術分野全体への支援でしたが、特定の企業とパートナーシップを結ぶケースもあるようです。具体的な企業名までは公開されていないのですが、以下がその例です。
■建設資材開発A社
コスト効率の良い建設資材や環境に優しい材料の開発を行う企業と提携を行っています。低コストかつ規制基準もクリアする素材の開発を進めることで、住宅建設コストの削減(≒販売金額の低減)を図っています。
■プレハブ住宅開発B社
プレハブ住宅やモジュラーハウスの開発に注力する企業ともパートナーシップを結んでいます。この会社では、現場作業員が建材をイチから加工するのではなく、ある程度大きなパーツを工場で製造し、現場ではそれらを組み立てる工法で施工しています。飲食業界におけるセントラルキッチンに近い仕組みにより、作業員の技能レベルが高くなくとも施工可能になり、従来の建設方法よりも安く速く住宅を供給できるといいます。
このようにNARは、政府・政治家へのアプローチと民間でのアプローチを同時並行で行いながら、住宅在庫不足是正を図っています。