「産業革命」で生産技術と財力を圧倒的に高めた連合王国(イギリス)。得意の戦争を巧みに繰り広げ、植民地支配を進めていきますが、その身勝手な行動により、ついに植民地による反発が起こります。立命館アジア太平洋大学(APU)学長特命補佐である出口治明の著書『一気読み世界史』(日経BP)より、当時の状況をくわしく見ていきましょう。
〈産業革命〉で一気に強国化!…「戦争で領地拡大」を“お家芸”としていた連合王国が〈アメリカ独立戦争〉で敗北を喫したワケ【世界史】
七年戦争のコストが、アメリカ独立戦争を引き起こす
アメリカの独立の話です。七年戦争を思い出してください。連合王国はヨーロッパ戦線には兵隊を送らず、ひたすらインドと北アメリカに兵隊を送って、戦争したのでしたよね。それで北米大陸に広い土地を得ました。
ということは、連合王国は北アメリカの戦争に、大きく投資したわけです。だから「金を回収せなあかん」という話になりました。身勝手なロンドンの議会は「アメリカでやった戦争だから、アメリカ人に払わせたらいい」と考えて、植民地の課税をがんがん強化します。それが砂糖法に印紙法、タウンゼント諸法といった法律です。
けれど、ロンドンの議会に北アメリカの代表はいません。それにそもそも、北アメリカで戦争したのもロンドンの議会が勝手に決めたことで、そのためにアメリカ人も徴兵されて、土地も荒らされたわけです。さらに、その金を払えというのですから、怒ります。
ここに「代表なくして、課税なし」という有名な言葉が生まれます。意見をいわせないで、金だけ徴収するなんて許せないという怒りが、アメリカ独立の根源です。
アメリカから自由平等を持ち帰ったフランス義勇兵
こうしてアメリカ独立戦争が始まります。アメリカ植民地と連合王国が戦うわけですが、連合王国にはフランスも腹を立てています。七年戦争で、北米のフランス植民地を根こそぎ奪われましたから。だから、アメリカ独立戦争では、フランスから多くの義勇兵が植民地軍に加わって、連合王国と戦います。一種の仕返しです。
アメリカは勝って独立しました。義勇兵として戦ったフランス人の貴族や将兵も、気分が高揚します。勝利はもちろん、ロンドンの支配に屈せず、植民地の人間も本国の人間も同じ人間だという、自由平等の精神に酔いしれます。「はしか」のようなものです。これをフランスに持ち帰るわけです。
このときフランスはルイ16世の時代です。ルイ14世、ルイ15世の散財がたたって、国家の借金が大変な金額になっているところに、絶対王制です。アメリカで自由平等の「はしか」にかかった人たちが帰ってきたら、ひどいと思うのは当然です。