「人頭税」を廃止した中国の人口が激増する

一方、中国の清は最盛期を迎えていました。

清の康熙帝の子どもの雍正帝はワーカホリックで、めちゃ仕事を頑張りました。どれくらい頑張ったかというと、奏摺(そうしゅう)という報告書を1200人くらいの役人と交わしていました。1200人の幹部と毎日、メールをやりとりしているような感じです。報告書を読んだら、朱字を入れます。「これはあかん」「これはよくやった」「今度、こんなことをしたらクビだぞ」などと。だから、睡眠時間が3時間くらいしかなかったともいわれています。

雍正帝は、税制も変えました。

中国の税金はもともと銀がベースでした。昔から陶磁器やお茶、絹といった世界商品がたくさんあって、その代金として世界中から銀が集まる中国だから、できたことです。

雍正帝の先代の康熙帝は、地丁銀制を導入しました。地税の「地銀」に、人頭税の「丁銀」を繰り込み、一括して銀納するという仕組みです。そして丁銀の額は固定化されました。

雍正帝は、さらに踏み込み、人頭税の「丁銀」を廃止します。つまり、地銀制にしたのです。土地や資産をベースに課税して、銀で納税するという仕組みです。

人頭税を廃止すると、中国の人口が急増しました。なぜかというと、人頭税の時代には、人の数が多いほど税金が増えるので、みんな子どもの数などを隠していたわけです。逆に、人頭税がなくなったら「正直に報告しようか」となったわけです。いかに税金というものが社会を変えるかがわかります。

出口治明
立命館アジア太平洋大学(APU)
学長特命補佐