『家事か地獄か 最期まですっくと生き抜く唯一の選択』の著者である稲垣えみ子さんは、会社を辞めて移り住んだ先のワンルームマンションに収納がなかったため洋服の断捨離を決行。その驚くべき「服9割減」の収納大整理模様と、「捨てることで得られるもの」について、著書から一部抜粋してご紹介します。
買い物こそが最大のムダな家事
となると、一日の中で服のことを考える時間がいきなり消えた。だって、私にはもう新しい服の情報など必要ないのだ。それまではなんだかんだと絶えず最新の服の情報をチェックし、ちょっとでも暇があれば店を覗いて物色し、あれも欲しいこれも欲しいと思い、そのためには歯を食いしばって金を稼がねばとストレスに耐えてきた。
その一切がなくなったんである。
いやはや、愕然としたね!だっていざそうなってみたら、私がそのことの一切合切にいかに膨大な時間とエネルギーを費やしてきたかに驚くしかなかった。だっていきなりの余裕!有り余る自由時間!私の人生はいきなりバージョンアップしたのである。
これをまとめますと、私は服を9割捨てたことで、おしゃれ心は一切捨てることなく、膨大なお金とエネルギーを生み出すことに成功したのだ。
そう改めて考えると、「買い物を減らす」ことの価値に改めて気づかずにいられない。みなさん家事というと、炊事洗濯掃除って思ってるかもしれませんがね、現代人が最も時間とエネルギーを費やしている家事は間違いなく「買い物」だ。買い物って立派な家事ですよ。これを省力化せずに何を省力化しようというのか。
「ここではないどこか」を探し続ける不毛改めて考える。我らはなぜこれほど買い物をしまくらずにいられないのだろう。次々と新しい服やら便利グッズやらを、膨大な時間とお金をかけて手に入れ続ける人生。それは全て、ここではないどこか、今じゃない未来に楽園があると信じ続けているからこその行動だ。
この行動パターンには決して終わりがない。なので、我らの人生は常に「時間がない」のである。自分は自分のままでダメなのだ、もっと何かを手に入れなければ幸せにならないのだと考え続けていたら、人生の時間はどこまでも足りず、一生は買い物で始まり買い物に終わることになろう。
ひいてはお金の悩みも生涯ついて回ることになろう。でももし、ここで良いのだ、自分は自分で良いのだ、自分はすでに全てを手に入れているのだと思うことができたなら。それだけで、人生は間違いなく一変する。有り余る時間とエネルギーを使って、本当にやりたいことをどこまでもすることができる。
なのでその第一歩を踏み出すか踏み出さないかは、人生において真に決定的な出来事なのではないでしょうか。
で、踏み出すためにはどうしたらいい? 私が熱くお勧めするのは、まずは服を9割減らすことである。服を減らすことは、自分を見つけること。欠点も美点もある自分をまるごと認めて、その自分を自分で愛し生かしてあげること。それができれば、あなたはもう何も探さなくていい。ここではないどこかではなく、今ここを存分に楽しめば良いのである。
稲垣 えみ子