『家事か地獄か 最期まですっくと生き抜く唯一の選択』の著者である稲垣えみ子さんは、会社を辞めて移り住んだ先のワンルームマンションに収納がなかったため洋服の断捨離を決行。その驚くべき「服9割減」の収納大整理模様と、「捨てることで得られるもの」について、著書から一部抜粋してご紹介します。
今日も元気で頑張ろうと思えれば「おしゃれ」
これまでたくさんの服を着てきたことは、それはそれで楽しかったことは間違いない。
でもあのままどこまでも服を買い続けていたら、私は間違いなく破綻していただろう。何年も着ていない服、存在すら忘れている服は山ほどあった。考えてみればそれは当然で、いくらイケてる服をたくさん持っていても着る人間は私一人。そして泣いても笑っても1年は365日。一人の人間が着られる服なんてどうしたって限りがある。
なのに毎シーズン毎シーズン、まるでそれが義務であるかのように、新しい服を買い続けていた私は一種の狂人であった。一体なぜそんな明らかに不合理なことがやめられなかったのだろう。
今にして思えば、私は服を買うことで「もっとすごい私」になりたかったのだと思う。今持っていない新しい服を着ることで、今の自分をバージョンアップ、あるいはリニューアルしたかった。逆に言えば、そうして自分を「盛って」いなけりゃ世間に認められないと信じ込んでいた。私は今の私のままじゃダメなんだと思っていたのである。
服を手放してみて初めて、そんなことはないと知ったのだ。私は私のままで大丈夫だった。毎日同じ服を着ていようが、自分さえ心地よく満足でいられたら、背筋を伸ばして機嫌よく笑顔でいられた。そう肝心なのは本当はそこだったんだ。
自分は自分であって良いのだと思えること。欠点も至らぬところも多々あれど、そんな自分として今日も元気で背筋を伸ばして生きていこうと思えること。そうだよそれこそが「おしゃれ」の目的なんじゃないだろうか?
それは洋服を次々と買い続けなくたって、ちゃんと達成できたのだ。いやむしろ、今ある服を減らしまくって究極の服だけを残したことで、間違いなく達成できたのである。