家電や便利グッズを捨て、身の回りにある幸せを大切にし、自分のことは自分でやる。稲垣えみ子さん流の「3原則」を実践して家事がラクになると、予期していなかった“グレートな人生”が待っているといいます。今回は、稲垣さんの著書『家事か地獄か 最期まですっくと生き抜く唯一の選択』から、「ラク家事人生」によって得られるものをご紹介していきます。
生活コストが圧倒的に減る
まずは、なんといってもこれ。家事がラクになると生活コストが圧倒的に減る! つまりはお金が貯まる! ……と大層に言うてみたものの、これはまあ当然といえば当然だろう。だってラク家事生活とは、欲を減らし、便利なものに頼らず、地味な暮らしに満足して生きることでもあるのだから、当然、暮らしは質素にならざるをえない。
でも実際にやってみて、想像を超えるその圧倒的なローコストぶりには我ながらびっくりしてしまった。というのはですね、そもそも「買う」という行為そのものが、ラク家事を始めて以来、私の中で突然、「キラキラした楽しみ」から、ヤバすぎる「要注意行動」に成り下がってしまったのだ。
「買う」=「家事が大変になる」、つまりはモノが増え、生活が複雑になり、掃除や整頓が大変になるという悪循環のスイッチオンでしかないという超ネガティブイメージが真っ先に思い浮かぶということになってしまったんである。
買うということは人生を豊かに明るくする絶対確実な方法と信じていた価値観からの180度の転換である。
「お金を(意識して)貯める」→「お金が(勝手に)貯まる」に変化
ついこの間まで「可愛い!」「楽しそう!」「美味しそう!」と夢中になって飛びついていた可愛い食器も、ゴチソウ食材も、かっこいい調理道具も、流行の服も、アクセサリーも、新しいインテリア商品も、今や「料理に時間がかかる」「ものが溢れて掃除が大変」「とてもじゃないが整理整頓しきれない」「洗濯がむずい」という「地獄への切符」にしか見えない。というわけで、全く手が伸びない。
我ながらすごいと思うのは、お金を使わない理由が「お金惜しさに我慢している」わけじゃ全くないということだ。ただただ欲しくないんである。こんなメンタリティーになってしまうと、なんの節約の苦労も忍耐もなく、ふと気づけばいつの間にか買うものがほとんどなくなっている。
日々買うものと言ったら、野菜と豆腐、たまに米と乾物と調味料。あとは数ヶ月に一度、掃除・洗濯用の重曹やクエン酸を買い、シーズンに一度下着を買い換える。ほぼそれだけ。それで十分「健康で文化的な生活」が成り立つんである。
それどころか、モノが減って家の中もスッキリ、時間にも気持ちにも余裕ができて、お金を使いまくっていた時と比べて何倍も健康で文化的な生活になっているのである。つまりは「お金を使わない方が豊かな暮らしができている」のである。
私はもう完全に、お金と豊かさの関係がわからなくなってしまった。しかし皮肉なことに、そうなってしまうとお金が貯まるんである。「貯める」んじゃなくて「貯まる」。何しろ使いみちがないのだから……。
最近、お金って、まるで恋愛相手みたいだナと思う。欲しくてたまらなかった頃は、追いかけても追いかけても逃げて行く。しかし「別にいらない」となったらひたすら寄ってくるのであります。まさかこのような境地に達する日が来ようとは。