人生100年時代、少しでも長く健康を維持したいもの。しかし、日々の生活習慣によっては、生活のQOLが大きく下がってしまうケースも…。日常生活での留意点とは?医師がわかりやすく解説します。※本連載は、医師・常喜眞理氏の著書『オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集したものです。
![](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/6/c/1280w/img_6cb67fbf946daf7878a616c19edae693117211.jpg)
恐ろしい…「運動しない中高年女性」の末路。運動機能の〈加速度的な低下〉がもたらす、ツラすぎる老後【医師が解説】
中高年からの運動は「無理しない、されど甘やかさない」
さて、ここまで運動、特に筋トレの重要性について述べてきましたが、中高年からの運動については、若い頃とは違った注意が必要です。
それは、決して「無理をしない」ということ。この歳からの運動には、効用だけでなくリスクもあるからです。
若い頃に筋力トレーニングの経験がある方は、インストラクターにこんな指導を受けたことはありませんか?
「トレーニングの翌日に、筋肉の張りや痛みをしっかり感じるくらいのウエイト(負荷)を使い、翌日はトレーニングを休み、まだ少し痛いかな……というあたりでトレーニングを再開するのがいいですよ」と。
これは言い換えれば、強い負荷を与えて筋肉をいったん壊して、それが再生するときに前よりも太くなるという、筋肉の超回復の特性を利用しましょうということです。要するに「ムキムキになる」ための運動、アスリートのための筋トレです。
しかし中高年からの筋トレは、アスリートになることが目的ではありません。あくまでも筋力の維持が目的です。筋肉の再生力が落ちている中高年が、いたずらに筋肉を壊すことは逆効果、本末転倒です。
また、強すぎる負荷は関節のケガにもつながります。無理は禁物です。特に真面目な方はつい頑張りすぎてしまいがちですので、お気をつけください。
最初はダンベル等は使わず、少し疲れを感じるくらいの負荷で充分です。どうしてももの足りないという方は、段階的に回数を増やしたり、ごく軽いダンベルから使うのがいいでしょう。負荷を上げるのはゆっくりと、慎重に行うことをおすすめします。
もし痛みを感じたら、すぐに運動をやめてください。あまり痛みが激しいときには専門医に相談しましょう。
しかしここが肝心なのですが、痛みが引いたら、また少しずつ運動を再開することです。
ここでやめてしまっては元の木阿弥です。自分を甘やかしすぎるのもいけません。大事なのは、運動する習慣を維持することです。
またウォーキングをするなら平地で行ってください。階段は禁物です。
ひざは痛めて手術をしても、元どおりには決してなりません。歩くだけでも体重の2〜3倍、階段昇降では体重の3〜7倍の負荷がひざにかかることが知られています。
関節をなるべく長く、痛みなく使うには、不要な負担をかけてはいけないのです。できるだけ平地を歩き、エスカレーターやエレベーターも積極的に利用してください。
無理しない、でも甘やかさない。
なかなか忍耐がいりますが、人生100年時代を乗りきるためです。ここはぜひ、頑張ってください。
常喜 眞理
家庭医、医学博士