人生100年時代、少しでも長く健康を維持したいもの。しかし、日々の生活習慣によっては、生活のQOLが大きく下がってしまうケースも…。日常生活での留意点とは?医師がわかりやすく解説します。※本連載は、医師・常喜眞理氏の著書『オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集したものです。
腰痛、ひざ痛などの関節トラブルも招きます
筋力の低下は関節へのサポート力の低下でもあります。筋肉の支えが弱くなると、腰痛、ひざ痛などの関節のトラブルも起きやすくなります。これに運動不足からくる体重増加が加わると、関節が悲鳴を上げるのも無理からぬことです。
肩の筋肉が落ちれば、肩こりもひどくなります。
さらに運動機能の低下だけでなく、ロコモは先ほど挙げた肥満、内臓疾患(しっかん)、消化吸収力の低下など、万病につながる由々しき事態をも招きます。最近の研究では、運動不足と認知症は、関連している可能性が高いとも言われています。
クオリティ・オブ・ライフの向上。そしてやりたいことをやれる人生のために、今日からでもトレーニングを始めようではありませんか。
◆日本整形外科学会による簡易診断に挑戦
自分の足腰が弱っていないかどうか、簡単なチェックをしてみましょう。
以下の項目に思い当たる方は要注意。足腰が弱り始めているサインです。
●片脚立ちで靴下がはけない
●家の中でつまづいたりすべったりする
●階段を上がるのに手すりが必要である
●やや重い家事が困難である(布団の上げ下ろしなど)
●2キログラム程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
●15分くらい続けて歩くことができない
●横断歩道を青信号で渡りきれない
(『ロコモパンフレット』2015年度版より)
◆効率よく筋力アップするなら、まず下半身(足腰)から
中高年からの運動というと、ウォーキングがもっとも一般的かもしれません。
確かに息が弾むほどのペースで行うウォーキングは全身運動であり、有酸素運動として有効です。精神的なリフレッシュなど、副次的な効果もあるでしょう。
しかし筋力をしっかり維持するためには、それだけでは不十分です。ある程度の負荷をかけながら筋肉を伸縮させる、いわゆる「筋力トレーニング」=「筋トレ」が必要になってきます。
トレーニングジムでインストラクターと相談しながら、年齢や体調、持病などを考慮して運動メニューを作成してもらうのがベストですが、誰にでもできることではないでしょう。
そこで、ここでは自宅でもできる簡単な筋トレ「スクワット」をご紹介します。
大女優の黒柳徹子さんが1日に何百回もやっているなど、最近ではよく聞かれるようになりましたが、ご存知のとおり立った状態からひざを曲げて、腰を落としたり上げたりする簡単な運動です。
このスクワットのよいところは、下半身の筋肉をくまなく鍛えられること。人間の筋肉の7割が下半身にあります。正しい姿勢で行うことで、お尻とももの筋肉を中心に、背筋や腹筋にも刺激を与えられます。「下半身(足腰)を制する者、筋トレを制す」なのです。
正しいやり方、フォームについては「スクワット正しいやり方」で動画をネット検索すればたくさん出てきます。そのうちのいくつかを見れば、共通する注意点があることに気づくでしょう。
チェックポイント
●足は肩幅に開き、できれば爪先はまっすぐ(無理なら少し開きましょう)
●腕を前に伸ばすとバランスがとりやすくなります
●特に腰痛持ちの方は背筋を反らさず(お尻を突き出さず)、お尻の穴が地面に向くように下腹に力を入れ、そのままの体勢でひざを曲げる
●ひざを曲げるとき、ひざは爪先より前に出ない
●ひざに負担がかかるので、ひざは90度以上は曲げない
●腰を下ろすときにはゆっくりと、立ち上がるときにはやや素早く
●お尻とももの筋肉を意識しながら行う
椅子に座って、そこから立ち上がった状態から始めるのもいいかもしれません。万一バランスを失っても、椅子が受け止めてくれますし、座面に触れる前に体を伸ばせば、ひざを曲げすぎることもありません。
ひざに故障のある方には座ったり、寝ながらできる筋トレもありますので、ぜひ、ご自分にあった運動をお探しください。
筋トレといえば、ダンベルやマシントレーニングを想像しがちですが、自分の体重だけでも十分な負荷がかかります。まずは無理のない範囲で、1日おきに5~10回を2~3セットぐらいから始めることをおすすめします。