年齢を重ねれば重ねるほど増えていく「白髪」。老化の代名詞と捉える人も少なくありませんが、実際のところ、年齢との相関関係はあるのでしょうか? 本記事では米国老年医学の専門医である山田悠史氏による著書『健康の大疑問』(マガジンハウス)から一部抜粋して、白髪のメカニズムや「ワカメが白髪に効く」ことの真偽などを解説します。
「白髪予防でワカメを過剰摂取」に思わぬリスク
一方で、「ワカメが白髪予防に効く」などと謳(うた)われることもありますが、特定の食品で白髪予防の効果が科学的に証明されたものはありません。
「ワカメに含まれるヨードがメラノサイトの働きを活性化して、白髪を予防します」というように「細胞レベルでの仮説」をもとにもっともらしく説明されていることもありますが、その場合、本来ならワカメを食べた人と食べなかった人で白髪の発症率を比較するような試験を行う必要があります。
そのような実証がないのであれば、「効果は分からない」と言わざるをえません。
むしろ、特定の食品を過剰に摂取することは健康被害につながるリスクとなります。ワカメも過剰な摂取は仇(あだ)となるかもしれません。ヨードが多く含まれるために、過剰に摂取を続けると、ヨードがその働きに影響を及ぼす甲状腺の病気を発症することがあります4。甲状腺疾患が原因で、白髪はむしろ増えてしまうかもしれません。
このように「食品と健康」に関する情報は、常に注意して見なければいけません。誰もが経験をし、避けたいと思っている老化は、ビジネスにつながりやすいのです。科学的な根拠という視点で見ると、そのほとんどが残念ながら過剰な広告になってしまっています。
健康情報で出てくる「科学の話」を読む際には、「それが本当に人レベルの臨床試験で検証されているのか」を確認するのが大切です。もし、マウスや細胞レベルの実験を引用しているのであれば、それはまだ根拠としては未熟です。また、「活性化」などのもっともらしく聞こえる言葉にも注意が必要です。
4 Roti E, Degli Uberti E. Iodine excess and hyperthyroidism. Thyroid 2001; 11: 493–500.
山田 悠史
米国老年医学・内科専門医