さまざまな味わいを持つ「スパークリング日本酒」。世界的に地位を確立し始めているその背景には、開発者の努力がありました。葉石かおり氏・監修、近藤淳子氏・著『人生を豊かにしたい人のための日本酒』(マイナビ出版)より、スパークリング日本酒の開発秘話についてみていきましょう。
厳選された日本酒スパークリングを「AWA SAKE」と認定
さかのぼること2016(平成28)年、永井さんは、価値ある日本酒スパークリングを普及させるという強い使命感のもと、蔵元9社で一般社団法人「awa酒協会」を設立し、初代理事長に就任。
日本酒スパークリングの新たな価値観を共有する組織として、品質維持のための厳しい基準と第三者機関での検査をクリアした銘柄を「AWA SAKE」と認定しました。普及促進や市場の拡大につとめて様々な活動を行い、2022(令和4)年現在は、全国28蔵元が加盟しています。
天皇誕生日レセプションや各国大使館の国際会議などでも採用されるようになった「AWA SAKE」、永井さんのグローバルな冒険はこれからも続きます。
一方、awa酒協会に所属する「七賢」の山梨醸造(山梨県)は、2022(令和4)年の春、日本酒の「国際化と高付加価値化」を掲げ、2万2,000円(720ミリリットル)という超高価格で、大吟醸古酒(2006年)と新酒の純米酒をブレンドした瓶内二次発酵の「七賢 EXPRESSION 2006」を発表しました。
まず、山梨県立美術館が所有する19世紀フランスの画家ジャン・フランソワ・ミレーの「種をまく人」を用いたラベルを著名デザイナーに依頼。さらに、新作をイメージする音楽や映像を制作することでこれまでにない「高付加価値」を与えたのです。
この新作発表会で北原亮庫醸造責任者は「『種をまく人』のエネルギッシュさに強くインプレッションを受けました。その印象とリンクさせるような躍動感のある酒質を具現化しています」と、自信作であることを語ってくださいました。
試飲させていただいた「七賢 EXPRESSION 2006」は、ブルーベリーや青リンゴのような爽やかさと、カラメルのような香ばしさもある不思議な香り。フレッシュな透明感とまろやかな旨味もありました。さらに野生的で微細な泡が、みずみずしく弾ける音や食感。これまでにないハッとするような色気さえ、感じられたのです。
価格帯や従来の風味のイメージを凌駕していく超高価格のスパークリング日本酒からも、目が離せません。
近藤 淳子
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション
副理事長、フリーアナウンサー
葉石 かおり
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション
理事長 酒ジャーナリスト、エッセイスト