さまざまな味わいを持つ「スパークリング日本酒」。世界的に地位を確立し始めているその背景には、開発者の努力がありました。葉石かおり氏・監修、近藤淳子氏・著『人生を豊かにしたい人のための日本酒』(マイナビ出版)より、スパークリング日本酒の開発秘話についてみていきましょう。
研究を重ねた末、完成した珠玉のスパークリング日本酒
もがき苦しみつつも藁をもつかむ思いで、本場シャンパーニュ地方へ単独渡仏。事前に学びたい要点を整理して挑み、製造のノウハウやヒント、さらにはシャンパンにかける関係者たちの想像以上の情熱に至るまで、有意義な発見がたくさんあったようです。
帰国後、2年間で200回の失敗を繰り返しましたが、フランスで得た製法の原理原則のおかげで、以前とは違った発展的な失敗だったとのこと。そして、2008(平成20)年、ついに「水芭蕉PURE」が完成します。
「水芭蕉PURE」は、予想以上の華々しいデビューを飾ることになりました。まず、国内では「東京国際映画祭2008」の乾杯酒に採用。それから数か月後には世界一予約が取れないスペインのレストラン「エル・ブリ」のメニューにオンリストされたのです。
「まさか、憧れの世界的なオーナーシェフからオファーがあるとは、心底驚きました」と永井さん。
“シャンパンでもビールでもない、初めてのテクスチャー”と大絶賛
なぜ採用されたのか知りたくて、シェフに会いに行ったところ、「食材を探し求めて世界中を旅しているうちに、日本で見つけたのが水芭蕉PURE。シャンパンでもビールでもない、すべてのスパークリングにない初めてのテクスチャー(舌触り)です」と大絶賛してくださったそうです。
2020(令和2)年にはフランスで開催される日本酒のコンペティション「Kura Master(クラマスター)」スパークリング部門の最高位で入賞という快挙を達成。
その後、審査員をつとめる約10名のトップソムリエたちが来日し、蔵訪問した際に、こんな素敵な言葉を残してくださいました。「フランスのワイン文化には当然誇りをもっているが、日本酒はそれに匹敵するくらい素晴らしい技術、文化、味わいがあります。フランスを訪れる世界の料理を知っているVIPにワインだけではなく、日本酒も提供したい。日本酒の価値を一緒に上げていきましょう」
この言葉は、日本酒の未来に対する大いなる可能性を秘めています。