かつての長寿村に共通する生活習慣

『新版 日本の長寿村・短命村』(1991年、サンロード出版)という本があります。著者はすでに亡くなられましたが、東北大学名誉教授の近藤正二先生です。近藤先生は日本中のほとんどの地域を歩いて調査して、どんなものを食べていたのかを調べています。

なかでも私が興味深かったのが、長野県の新潟寄りの地域です。そこは長寿地域の1つですが、大豆の一大産地でした。

その地域で生産される大豆が欲しいので、新潟の人たちが海産物を持ってきて、大豆と交換していたようです。大豆は植物由来の高たんぱく質食品ですし、海なし地域でありながらワカメなどの海産物も摂ることができました。それがこの地域の長寿の理由だというのです。

この本によると、東北は昔から短命の地域が多かったようです。今も短命な青森県(男女とも最下位、2020年)は、塩分摂取量が多く2020年のデータでも10.5g 摂っています。

高血圧に関与している乳酸菌などを研究している人たちがいて、それによると、塩分摂取量が過剰になると、塩分を好む腸内細菌が増え、それが血圧に悪影響をおよぼしているのではないかといわれています。

減塩しても血圧が下がらない人は、腸内フローラに原因がある可能性も示唆されています。

腸内フローラを悪化させる食べものに、動物性たんぱく質・脂質と砂糖がありますが、塩分もよくないのです。

厚労省が推奨する日本人の1日の塩分摂取量は、男性7.5g 未満、女性6.5g未満となっています。

また欧米では6g未満を推奨している国もありますし、WHO(世界保健機関)はすべての成人の減塩目標5gとしています。塩分を摂りすぎている人は、減らす工夫をしてみましょう。

内藤 裕二

京都府立医科大学大学院医学研究科

教授/医学博士