睡眠時間をとっているのにもかかわらず「なんだかスッキリしない」「寝た気がしない」と悩んでいる人は多いのではないでしょうか? そこで本稿では、長年腸内細菌を研究し続けている医学博士の内藤裕二氏による著書『70歳からの腸活』(エクスナレッジ)から一部抜粋して、睡眠の質を良くするための方法を解説します。
睡眠の質が腸内フローラを左右する
現代の都市生活者は、概日リズムからかけ離れた生活をしています。また遅くまで起きているため、睡眠時間が不足している人も多いようです。
睡眠は翌日の仕事のパフォーマンスや、メンタルのコントロールに一番大きな影響を与えているので、夜中に起きていたり、極端に睡眠時間が短いと、仕事の能率も下がるし、心の健康にもよくありません。効率よく仕事をしたいと思ったら、もっと睡眠を大事にするべきです。
ただ十分な睡眠時間をとっていても、「睡眠の質」が悪いという人がいます。同じ7時間寝たとしても、朝すっきり目覚める人がいる一方、眠くて頭がボーッとしている人もいます。また70歳ぐらいの人では、床についても眠れなかったり、夜中に目が覚めたり、起きる予定の時間よりも早く目が覚める人もいます。これらは睡眠の質が悪い状態です。
睡眠の質には、メラトニンというホルモンが関わっています。メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれていますが、このホルモンが体内に増えてくることで、ヒトは眠くなります。
メラトニンは、セロトニンというホルモンからつくられます。日中に適切な量のセロトニンが分泌されると、夜にメラトニンがつくられやすくなります。
さらにセロトニンはアミノ酸の一種であるトリプトファンからつくられます。このトリプトファン→セロトニン→メラトニンというサイクルが大事です。
ちなみにトリプトファンが豊富な食品の1つにバナナがあります。しかしバナナを食べればセロトニンが増えて、メラトニンも増えて、睡眠の質がよくなるという単純な話ではありません。
バナナのトリプトファンから腸のセロトニンがつくられても、脳には入りません。ですから、いくらバナナを食べても、それだけで睡眠の質がよくなるわけではありません。