『家事か地獄か 最期まですっくと生き抜く唯一の選択』の著者である稲垣えみ子さんは、電子レンジ、フードプロセッサー、極めつけとして冷蔵庫まで手放しました。その結果、キラキラした料理本を参考にするなど凝った料理をつくる日々から、超ワンパターンな「地味メシ」を食べ続ける生活へと大きくチェンジ。食事がおいしくない、つまらない…という状況になると思いきや、贅沢なごちそうをあきらめたことで、「何もかもが手に入った」というのです。その理由を著書から一部抜粋してご紹介します。
追い求めていた「可能性」は自分が本当に求めていたものなのか
いやーこれってある意味「奇跡」なんじゃないでしょうか?
私は今や、時間も、エネルギーも、健康も、美味しさも、つまりは全てを手に入れたのだ。しかも努力して手に入れたわけじゃなくて、全ては努力を手放したことで手に入ったのだ。間違いなく自分が一番びっくりしている。
で、改めて、一体なぜこんなことが起きたのかを復習するとですね、ことの発端は、冷蔵庫をやめたことである。冷蔵庫をやめたことで、私は「日々ごちそうを食べる」という可能性を手放さざるをえなくなった。そこから、この奇跡の全てが始まったのだ。
そう「可能性」!
世の多くの人が当たり前に追い求めている「可能性」。それをあきらめた途端、全てが手に入ったという恐るべき事実!
このことをどう考えたら良いのだろうか。
思うに、可能性を追求すること自体に問題があるわけじゃないのだ。だが私が当たり前に追い求めていた可能性は、あまりにも小さな世界に偏っていた。
当時の私が夢見ていたのは、日々、昨日とは違うごちそうを食べ、広い家に住み、山のような服を毎日取っ替え引っ替え着る……という、お姫様のような暮らしがしたいという「可能性」である。でもそれは冷静に振り返ってみれば、実は自分自身が本当に求めていたわけではなく、際限なくモノを売るために誰かが意図的にこしらえた一つの物語にすぎなかったのではないだろうか。