リフォームにインスペクションを活用する場合の注意点

インスペクションは、もともと安心して中古物件を売買できるようにと整備されてきた歴史があります。サービスは古くからありましたが、検査方法や技術者の技量などもバラバラで、その信頼性には多くの課題があったため、ひと昔前までは、中古住宅の売買と言えば、当たるか外れるかという博打に近い買い物でした。

そこで2013年6月には法律によって検査方法などのガイドラインが整備され、2017年2月には既存住宅状況調査技術者の講習制度を創出、2018年4月からは宅建業法により中古住宅の売買時にインスペクションの有無を説明することが義務づけられるなど、国を挙げて普及に力が入れられてきました。

こうして、インスペクションを利用すれば建物の状態を事前に判断することができ、不具合が見つかればリフォーム費用を予算に組み込んで物件を購入するなど、対策をあらかじめ検討できるようになりました。そして同様に、リフォーム計画を検討するためにも大いに活用できるサービスとなったのです。

ではまず一般的なガイドラインに沿ったインスペクションでは、一体どんなことがわかるのか見てみましょう。(図表1)

出所:『やらなければいけない一戸建てリフォーム』(自由国民社)より抜粋
[図表1]既存住宅状況調査(インスペクション)の概要 出所:『やらなければいけない一戸建てリフォーム』(自由国民社)より抜粋

この他にもオプションで給排水の劣化や漏水、換気・電気・ガス設備などの作動不良などについて確認する項目もあります。

この調査によって報告されるのは、図表1の「調査報告内容」に記載された項目です。その報告内容から、右欄の「結果から推測できること」に記載したような現象を推測することができます。例えば、柱に1000分の6以上傾斜(1メートルの垂直距離で6ミリ以上のズレ)が見つかれば、何らかの理由によって構造体が歪んでいる可能性があると推測でき、更に詳細な耐震診断などに進むかどうかを検討することができます。

また、基礎から錆び汁をともなったひび割れが見つかれば、基礎内部の鉄筋が錆びている可能性があり、コンクリートの中性化を防止するメンテナンスなどを検討することができます。このように、現在の状況を把握することは、適切なメンテナンス計画を立てるためには大いに役に立ちます。場合によっては、リフォームで対応するには費用がかかりすぎるから建て替えた方がいいという判断になることもあり得ます。

ただ、リフォームに活用するためには調査の範囲と項目に注意が必要です。というのも、通常のインスペクションの範囲は、原則として外周および内部の目視可能な部分と、床下および天井に設置された点検口から覗き込んで見える範囲のみです。例えば移動できない家具や物置、室外機などで隠れているところや、点検口から見えない範囲は調査の対象外となります。また、調査項目は基本的に劣化と雨漏りに絞られていますので、断熱や耐震などの状況も知りたい場合は一般的なインスペクションだけでは足りません。

そこで、リフォームにインスペクションを活用する場合には、基本の調査に加えてオプションで追加調査をお願いしたいところです。

【リフォームにお勧めのインスペクション追加調査】

①点検口から床下および小屋裏の内部へ進入する詳細調査

②天井・壁・床下の断熱状況、断熱材の種類、厚さなどの調査

③1981~2000年の建物には、接合部の金物の調査

②は現時点の断熱性能を把握することができ、断熱リフォームの計画を立てるために役立ちます。

③は、新耐震木造住宅検証法による簡易診断の検査項目の一つなので、プロに見てもらえれば安心です。

また、②と③を調査するためには①も必要になりますが、床下を詳細に調査すれば、シロアリの侵入経路となる蟻道や給排水管の漏水などを発見できる可能性も高まります。ただし、これらの追加調査はインスペクションを行う調査会社や個人事業者によっては扱っていない場合もあるため、依頼する前に調査可能かをよく確認しておくことが肝心です。