売却時の価値を高める「リフォーム」とは?

そして、もう一つの「性能」については、こだわりがプラスに影響する時代になっている。昨今のエネルギー価格の高騰で、省エネに対する意識の高まりもあって、「内窓」に代表される省エネ性能の向上は、将来的な売却においても価値を高める要因になる。

実際の不動産市場で売りに出される「こだわりリフォーム」物件の状況を紹介しよう。

先ほど、「間取り」のこだわりが一番売りづらいと指摘したが、端的に言えば、そのこだわった間取りを、同じように好む人がどれくらいいるかがポイントになる。不動産の価格や売れ行きは「需要」と「供給」で成り立つので、一つの物件(供給)に対して購入したいと思う人(需要)が何組いるかで価格が決まり、売れ行きも比例する一方で、一つの物件を購入する人は一組であることもまた事実である。その一組が運よくマッチングすれば、予想以上に早く、しかも良い価格で売れることもある。従って、あくまで総論という考え方が正しいだろう。

また、「設備」のこだわりについて、ある程度住み続けてから売りに出すのであれば影響はないと書いたが、実際にはリフォームしてから数年という早い段階で売りに出される物件も多い。その理由としては、「いざ生活してみたら、使い勝手が悪い」という理由が多く聞かれる。

物件選びと良いリフォームがつながるような業者選びを

こういう理由で売りに出されると、まだ返済も進んでないことも多い。当然、販売価格も高くならざるを得ず、結果的に売りづらくなるという流れになる。

では、なぜせっかく練りに練ったこだわりの住まいが、想像と違う結果になり、売りに出すことになるのだろうか?

売却相談から見える傾向として、まず一つは、家族の中でのこだわりの温度差から生まれるものがある。たとえば夫婦の間でも、その温度差は違う。こだわりの強い方の意見がどうしても色濃く反映されがちなため、妥協側の不満に繋がるパターンである。

もう一つは平面上のイメージと実空間とのズレである。本来リフォームを提案してくれる業者さんの力量に頼りたいところだが、こだわりの強さから業者さんもいえなくなることがあるようだ。

そして、最後は不動産的視点が不足していることだ。当然ながらリフォームを提案する側は、すぐに売って欲しいとは思っていない。施主の希望にできる限り応えようと考えてくれる。それが結果的に売りづらい現実につながってしまうことになる。

こうした事例を踏まえると、「物件選び」と「良いリフォーム」は一つの流れとして、つながっていることがわかる。しかし、その両者を担当する業者が別々であることに課題がある。まさに、「業者選び」が重要であるといえる。

日下部 理絵

マンショントレンド評論家、住宅ジャーナリスト

高橋 正典

不動産コンサルタント

畑中 学

不動産コンサルタント、武蔵野不動産相談室株式会社代表取締役