マンションの売却は高値でしたいもの。しかし、査定価格と実際の売却時の金額が異なることも少なくないため、高額査定にこだわるのは危険です。日下部理絵氏、高橋正典氏、畑中学氏による著書『絶対に失敗しない! 中古マンションの見極め方』(ビジネス教育出版社)より、実例とともに詳しく解説します。
査定額3,000万円→売却額2,200万円に…不動産営業マン「もう少し値下げしませんか?」の裏に潜む、マンション売却の知られざる実態【住宅のプロが告白】
査定価格と実際に売れる金額との違い
不動産会社から提示される査定金額は、あくまでも「売りに出す金額」であり、「売れる金額」ではない。実は、ここに失敗の一番の理由が隠れている。当然ながら売却する人は、少しでも高く売りたいと考える。そこで複数社に査定を依頼した場合に、一番高く査定してくれる会社にお願いしたくなるものだ。不動産会社も依頼を受けなければ何も始まらないため、まずは依頼を受ける(媒介契約)ために、高い査定金額を出す傾向がある。
高額査定に頼り過ぎた失敗事例
取り上げる最初の事例は、私の会社及び他にもう1社査定を依頼されたお客様の事例である。
私の書籍をご覧いただき、私が運営している会社に査定依頼があった。神奈川県横浜市の物件で私の査定金額は6,000万円ほど。しかし、もう1社の査定金額が7,500万円だという。信頼はいただいているようだったが、あまりに金額の差があるので、結果的に当社に依頼いただけるものの、金額は7,000万円にしてほしいと言われた。
私は、かなり難しいとお伝えしつつも一旦引き受けた。しかし、残念ながら成約どころか内覧の予約も入らず、2ヵ月ほど経過したところで、価格を下げるよう相談させていただいたが、どうしても最初に高い査定をしてきたもう1社のことが気になるようだったので、お断りさせていただくことにした。
そこから、数週間後に7,500万円ほどで別の会社から売りに出されたが、3ヵ月経過しても売れなかったようだ。
私も別の仕事があるので、その後、細かくはチェックしていなかった。さらに半年ほど経過したころ、インターネット上から物件情報が消えており、「成約できたのかな?」とすぐに調べた。不動産業界では業者同士のオンラインネットワーク(レインズ)があるので、成約金額などもわかることがある。すると、この物件は成約になっていたものの、成約金額は5,600万円だった。
その依頼者がどのような考えで成約したかは分からないが、査定金額には根拠が必要であり、その金額で売るための「販売戦略」が重要になる。売れる確約のない無根拠な高額査定には気をつけなければならない。