「仲介で売却」と「下取り」の大きな違いとは?

不動産会社に売却の相談をすると、まず査定に来てくれる。設備機器の劣化具合や、フローリングやクロスの状況、陽当たりや眺望などを確認して、査定金額が出てくる。

マンションの場合は「取引事例比較法」という、周辺の類似物件との比較によって金額を決める査定方法で算出さる。この査定金額は一般の消費者(個人)に売却することを想定したもので「仲介で売却」することを前提にしている。しかし、あくまでも不動産売買における査定金額は「売りに出す金額」であり、「売れる金額」ではないことに注意が必要である。

査定金額は「2~3カ月あれば売れる」金額で設定

いざ市場に出してみた結果、その通りにすぐに購入者が現れる場合もあれば、なかなか売れずに数カ月かかる場合もある。査定金額は一般的に、2〜3カ月あれば売れそうな金額だ。その金額を仮に3,000万円としよう。この場合、売却する人が契約成立を急いでいなければ、もう少し高い金額で出すこともある。「チャレンジ価格」ともいうが、概ね200万円ほど高く売りに出して様子を見ることになる。

逆に、売却する人が急いでいる場合には当初の査定金額より少し低い金額で売りに出すこともある。急いでいる度合いにもよるが、200万円ほど安く出すことになる。おわかりの通り、当初の査定金額からプラス・マイナス200万円(プラス・マイナス7%程度)の間で売買が成立する可能性が高くなるわけだ。

ここで、もし売却する人が現金化をさらに急いでいる場合には、不動産会社による「下取り」(買取り)という選択がある。この場合は、先ほどの「仲介で売却」する場合のように、いくらで売れるのかが市場に出してみないとわからないのと比べて、買主が不動産会社であるため、提示された金額で購入してもらえるメリットがある。

売却側だけでなく、不動産会社にもメリットが多い「下取り」

しかし、問題なのは「下取り価格」がいくらになるか、である。不動産会社が「下取る」目的は、事業上のメリットがあるからだ。それは、下取った物件を転売することで得られる利益に他ならない。当然に「下取り」金額が安ければ安い方が良いということになる。一般的に、「下取り」の金額は市場価格の7割程度となる。高く買ってくれたとしても8割程度になる。先ほどの「仲介で売却」の査定金額が3,000万円だった場合には、2,100〜2,400万円ということになる。

ちなみに、「下取った」不動産会社はその物件を一旦会社の名義に変えて、リフォームを行い、利益を上乗せして市場に売りに出すことになる。こうして売りに出てきた物件が、「リフォーム済」物件として、新たな買主に売買されることになる。

売却する側から見れば、明らかに「仲介で売却」の方が手にする金額は圧倒的に多くなるので、「下取り」を選択する人はいないのではないか、と思われるだろう。

だが現実には、例えば自宅を売却して次の家を購入・あるいは新築している場合に、その買い替え先の引き渡しが近くなってきた場合などは、売却資金を次に充当する関係から、すぐに現金化できる方法を選択する人もいる。また、相続で取得した物件などで現金化を急ぐ人もいるだろう。そういう場合には、とても役立つ選択肢であるともいえる。