納税申告の際の注意点
家族への給料も家事関連費も本来は事業用の経費にはなりません。そのため、例外的にこれらを経費にするには一定の制約に留意すべきです。
まず、前述のとおり、青色専従者給与の対象者は扶養控除を受けることができません。そのため、配偶者を青色専従者にすると、配偶者控除も配偶者特別控除も対象外となります。
たとえば、専業主婦(主夫)のケースでは、それぞれ38万円+38万円=76万円の所得控除が受けられなくなります。この金額以上に給料を支払えば節税効果はありますが、給与所得は年間98万円を超えると住民税が課されます。
家庭内全体での納税のバランスを考えながら、配偶者控除等が受けられないのであれば、98万円のラインにこだわらず業務量に応じた給料を最大限に支給することも一案でしょう。
また、家賃の一部を経費にする場合は別ですが、自宅の一部を経費にする場合には注意が必要です。先のことはわかりませんが、自宅を売却するとき、その売却益から最高3,000万円を控除できる特例があります。
しかし、建物の10%以上が事業用であれば、この特例は居住用部分だけに限られ、逆に居住用部分が90%以上であればすべて居住用として3,000万円控除を受けることができます。特に自宅の建物を減価償却して経費にするときには、事業用割合に十分留意すべきです。
事業用経費だけでなく「所得控除」にも目を向けて節税対策を
フリーランスの節税対策では経費にばかり気を取られがちです。しかし、小規模企業共済やiDeCoでは払込証明書が交付されるため、必ず所得控除が実現します。
節税効果も高く、所得税は累進課税のため、所得控除の金額によっては下記図表のとおり適用税率にも影響するだけではなく、住民税や健康保険料にまで波及します。
課税所得という広い視野で課税対象を捉え、判断に迷うことが多い事業用の経費よりも、経費と同じ効果がある所得控除にも目を向けてみましょう。
田中 康雄
税理士法人メディア・エス
社員税理士
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