「便利な家電は一通り揃えているけど、やっぱり家事が苦手」…こんな人はきっと少なくないでしょう。しかし、『家事か地獄か 最期まですっくと生き抜く唯一の選択』の著者である稲垣えみ子さんは、家電を片っ端から手放したことで家事が楽になり、「バラ色の世界が現れた」とまで語っています。さらに「お金がなくなったことで家事がいっそう楽になった」とも。その理由を、著書から一部抜粋してご紹介します。
家電を手放したら、なぜか家事がラクになった
最初のきっかけは「節電」だった。
福島の原発事故を機に「実は原発頼みだった便利で快適な暮らし」に今更ながら気づいた私は、まずは個人的にそこから脱却せんと、電気の使用量を可能な限り減らすべく勝手に格闘を始めた。まあそれだけなら珍しくもなんともないことだが、私の場合、一人暮らしゆえ調子に乗る性格を止める人もおらず、事態はどこまでもエスカレート。果てはずっと当たり前に頼ってきた家電製品を「なくてもやっていけるのでは?」と一つ一つ手放していくところにまで至ったのである。
この「暴挙」が、思いもよらなかったバラ色の世界への扉となった。
何しろ驚いたことに、家電を一つ手放すたびに、家事がラクになっていくのである。
いや……これってどう考えてもものすごく変ですよね?だって家電製品というものを一言で定義するならば「家事をラクにするための道具」である。だからいくらお調子者の私とて、それを手放すに当たっては、大げさでもなんでもなく、これから我が日々の暮らしはどんな大変なことになってしまうのかと自分なりに人生をなげうつ覚悟だった。それがいざ手放してみたら家事がめちゃくちゃラクになるなんて、そんなこと、一体誰が想像できようか。
でも、これが掛け値なく本当のことなのである。
そうなのだ。本当の本当に、掃除機を手放したら掃除がラクになり、洗濯機を手放したら洗濯がラクになり、炊飯器や電子レンジやついでに冷蔵庫もなくしたら炊事が飛躍的にラクになったのだ!我ながらキツネにつままれたようである。
そして次の異変は、いろいろ思うところあって50歳で会社を辞めることとなり、人生初の「給料をもらえない生活」に直面した時に起きた。