マンションの大規模修繕…「資産価値維持」のためにも必須

加藤さん宅は、2回目の大規模修繕を無事に終えた直後に売却した。

この大規模修繕とは何か。じつはマンションの大規模修繕工事について、明確な用語の定義はなく、一般的に建物の経年に対応した建築関係の改修工事のうち、10〜15年に一度の周期で(計画的に)広範囲をいっときに施工するものといわれる。なお、2021年9月に改訂された長期修繕計画作成ガイドライン(国土交通省)によると、12〜15年とされている。実施される工事は、外壁の補修、屋上等の防水、鉄部の塗装、給排水管など主に共用部分の工事を行う。

大規模修繕は管理組合にとって、「十数年に一度の大イベント」と位置付けられている。それはスケールが大きい工事で、工事費が数千万〜数億円と巨額の費用を投じて行うことに起因している。そのため「難しい」「大変」「面倒」といったイメージを持ちやすく、言い換えれば、管理組合として、本来行わなければならないことを見失ってしまいやすいとも言われている。

「壊れたらその都度、修理や修繕をすればいい」と思う人もいるかもしれない。ならばなぜ予防的な大規模修繕をするのか。

新築当初、美しかったマンションも長年、太陽光や風雨等にさらされていると、屋上防水や外壁などが傷んでくる。給排水や電気などの設備についても経年劣化していく。これらを放置していると快適であったマンションの暮らしに影響を及ぼすことになる。的確に劣化を発見し修繕することが、耐久性を高め、結果として、安全・安心・快適な暮らしはもとより資産価値にもつながる。

つまりマンションの経年劣化を改善するために、おおむね10〜15年周期で計画的な大規模修繕を実施することが重要なのである。計画的な修繕なので「計画修繕」ともいわれる。

大規模修繕の大きな特徴として、人が住んでいるマンションで行う点があげられる。人が住みながら工事をするので、施工業者が防犯、騒音、粉塵、洗濯などにいかに配慮できるかが重要だ。

日下部 理絵
マンショントレンド評論家
オフィス・日下部 代表