年を重ねるにつれて身体機能も衰え、自宅にいるにもかかわらず、大きな怪我を引き起こしてしまうケースも少なくありません。安心した老後を迎えるためには、「『備える・やりたいリフォーム』で自宅を備えることが大切」と、一級建築士・高橋みちる氏は言います。高橋氏の著書『やらなければいけない一戸建てリフォーム』より、詳しく見ていきましょう。
重要なのは「収納」「キッチン」「照明」のバリアフリー化
3.収納を手の届く高さに設定
これから収納を考えるなら、高さに配慮したいところです。というのも、70代頃から腕の可動域が狭くなり、吊戸などの高所は荷物の出し入れが大変な作業になってしまうからです。
また、床下収納も出し入れの姿勢は腰などに負担が大きく、辛くなります。収納は高さが重要で、上限が目の高さ、下限が膝の高さを目安に収めておくと、長く便利に使い続けることができます。吊戸を撤去すれば天井面が広く見えるため、お部屋全体も広く感じられるようになります。
リフォームは断捨離のチャンスです。この際思い切って不要なものを処分し、コンパクトな収納に変えるのも良いかもしれませんね。
4.照明の明るさを強化
加齢とともに必要になってくるのが、照明の明るさです。20歳を基準にすると、60代を過ぎると2~3倍もの明るさが必要になるとも言われています。照明計画を変更するには、壁や天井の裏に隠れている電気配線も変更する必要がありますから、壁紙を貼り替えるついでに照明計画も見直しておきたいところです。
照明は全てを明るくするよりも、キッチンの手元、食卓、作業台や机の上、玄関など、作業が必要な場所をスポット的に明るくするのが効果的です。階段や廊下の危険防止として、足元に暗くなるとセンサーで自動点灯するフットライトなどを設置するのも良いでしょう。
5.コンロのIH化
住み慣れたわが家であっても、ちょっとしたことで家庭内事故は起こってしまうものです。特に大事故につながるような危険な物には、安全に配慮しておきたいところです。
ガスコンロの消し忘れなどはよく心配されますが、2008年から安全センサーの搭載が義務化されたため、コンロ火災は大きく減少しています。まだ旧式の安全センサーが未搭載のものをお使いの場合は、リフォームで交換されることをお勧めします。
IHクッキングヒーターもかなり普及してきましたが、やはり「火」を使わない安心感が支持されているようです。着ている衣類に着火するという事故もありますので、IHの方がより安全と言えるかもしれません。キッチンメーカーのショールームなどで実物を確認し、使い勝手に応じて選ぶと良いでしょう。