年を重ねるにつれて身体機能も衰え、自宅にいるにもかかわらず、大きな怪我を引き起こしてしまうケースも少なくありません。安心した老後を迎えるためには、「『備える・やりたいリフォーム』で自宅を備えることが大切」と、一級建築士・高橋みちる氏は言います。高橋氏の著書『やらなければいけない一戸建てリフォーム』より、詳しく見ていきましょう。
「風呂」「トイレ」の理想のリフォーム方法は?
6.出入口を広く、引戸へ変更
リフォームで室内の建具を交換する予定があれば、開口部の幅はできるだけ広く、可能であれば引戸に変えると良いでしょう。
開き戸では手前に開く際には一旦後ろに下がる動作が必要で、障害の程度によっては後ずさりが難しくなる場合もあり、また車椅子対応という点でも引戸は優れています。開け放しても邪魔になりませんし、引戸は誰にとっても使いやすいですね。ドアから引戸に簡単にリフォームできる商品もありますので、施工業者に相談してみてください。
ただし、今よりも開口を広げたり壁を撤去して新しく開口したりする場合は、耐力壁かどうかの確認をしなければ安易に行うことはできません。壁や開口部の位置を変更する場合は、必ず建築士資格を持った設計士に検討してもらいましょう。
7.トイレの改修
トイレは毎日必ず使う場所です。昔勤めていた工務店の社長が「死ぬ3日前まで自力でトイレに行きたい」といつも言っていましたが、それを可能にするトイレを是非用意しておきたいものです。
高齢期にトイレで問題になるのは、出入口が狭い場合です。体調を崩した時などに介助者に手伝ってもらうというケースは意外に多く、入り口が狭く奥に細長い一般的なトイレでは、これが大変困難なのです。この手のトイレに有効なのは、出入口の方向を変え、できるだけ開口幅の広いドアとすることです。
この場合も壁や柱など構造体の変更が伴うため、前項のドアから引戸へ変更するのと同様に、必ず建築士資格を持った設計士に構造を検討してもらいましょう。また、立ち座りの際の支えとなる手すりも一本付けておくと安心です。
8.お風呂の改修
現在のお風呂が出入り口に10センチメートル以上の床段差がある場合は、ユニットバスにリフォームすることで床段差を無くすことができます。また、ユニットバスに断熱材をオプションで追加すれば、家全体の断熱工事まではできない場合でも、浴室だけは温かい空間を作ることができます。
お風呂は介護者と一緒に入ることも想定し、トイレと同様に出入り口は開口幅が広めの引戸にしておくと安心です。ユニットバスの手すりは必要になった時に後付けが可能ですが、シャワーの高さを自由に設定できるシャワーバーが手すりを兼ねる商品もあり、浴槽へ入る際の支えにもなり安心です。
高橋 みちる
リフォームコンサルタント
アールイーデザイン一級建築士事務所 代表