古代中国の春秋時代は、戦乱の一方で多くの哲学者が生まれた時代でもありました。今回は、春秋時代の哲学者の中でも、「五常」の教えなどで名を馳せ、様々な作品の題材にもなっている孔子の思想について、著書『超要約 哲学書100冊から世界が見える!』(三笠書房)より白取春彦氏が解説します。
儒教の経典となった孔子の教え
孔子の死後にまとめられた『論語』は中国の人々に大きな影響をおよぼし、今では儒教の経典「四書」の1つとなっています。
儒教とは、孔子の教えを土台にして、古代からの神話、制度、習俗がつけ加わった集合体としての思想・信仰体系のことで、これは紀元前の漢王朝の儒教再興から始まったとされています。その孔子の霊を祀るという孔子廟は日本を含めたアジア一帯の国に見られ、人々はその廟において礼拝をしています。しかし、孔子は『論語』において、神や鬼など、宗教的なことについては1つも述べていないのです。ちなみに、現在のハルビン市にある五常市は、徳目の「五常」に由来しています。
孔子の思想はイエズス会宣教師によって16世紀にヨーロッパに知られることになりましたが、『論語』の翻訳はようやく17世紀後半になってからでした。
賢人のつぶやき 義を見てせざるは勇無きなり
白取 春彦
作家/翻訳家