せっかく起業しても、残念ながら事業がうまく軌道に乗らない人も少なくありません。スタートアップ企業が失敗する理由とは、いったい何なのでしょうか? 事業を成功させるための「ボトムアップ・リサーチ」の重要性について、名門ブラウン大学で最高評価の講義「アントレプレナリアル・プロセス」の神髄を1冊にまとめた著書『すべては「起業」である: 正しい判断を導くための最高の思考法』(早川書房)より、ダニー・ウォーシェイ氏が解説します。
資金不足やチームの不和が問題?…スタートアップ企業が「失敗する本当の理由」とは【名門ブラウン大学で最高評価の講義】 (※写真はイメージです/PIXTA)

ボトムアップ・リサーチに投資する

ロケット打ち上げの始まりは、話し合って気の利いた答えを出すことではない。正しい問いを見つけるという困難な作業から始まるのだ。──デレク・トンプソン『Google Xと最先端の創造性の科学(Google X and the Science of Radical Creativity』

 

アルバート・アインシュタインは、「もし私が問題を解くのに1時間与えられ、それに自分の命がかかっているとしたら、私は最初の55分を、適切な問いを決めるために費やすだろう。適切な問いがわかれば、5分とかからず問題を解くことができる」と述べている。

 

アインシュタインのこの見解は「発見・解決・拡大」起業プロセスにおける、最初のステップがきわめて重要なことを明確にし、なぜここで多くの時間と労力をつぎ込むべきかを伝えている。

 

この最初のステップを駆け足で通り抜け、製品を市場に出したくなる気持ちはわかる。しかしアインシュタインと同じく、1時間考えるなら、55分は満たされていないニーズを見つけて確認することに費やすべきなのだ。その最初のステップがうまくいけば、次の確固とした価値提案の決定作業はスムーズに進むはずである。

 

満たされていないニーズを確認できなければ、時間を浪費しているのだ。運に恵まれるよう祈ることだ。

ボトムアップ・リサーチが重要であることの証明

数年前、スタートアップ企業が失敗する理由に関する調査を目にした。1番多い理由は何だと思うだろうか。資金不足、チームの不和、競争、規制の問題…どれもそれらしい理由である。

 

しかし実際のナンバーワンは「顧客を顧みない」、2番目は「市場のニーズがない」だった。にわかには信じがたい。まずなにより優秀な起業家が顧客を無視するなど考えにくい。顧客の言うことを受け入れられない場合もあるが、無視するなど、起業家として成功するためには悪手ではないのか。

市場のニーズがないことについては、これこそボトムアップ・リサーチの必要性を裏付けるものだ。もし成功の可能性を高めたいのなら、ボトムアップ・リサーチは、これら2つの理由によるスタートアップの失敗を予防する最善の策である。

 

読者のみなさんには、私の話を聞いて、前もって時間をかけ、満たされていないニーズを発見し確認することが重要であると納得してもらいたい。そのためには解決したい問題を、はっきりさせることから始めよう。そうでなければ、使い道のない解決策をつくるだけになってしまう。

 

私はこれまで何百もの講義やワークショップを開催してきた経験から、ストーリーはこうした考えを強化し、あなたがたの記憶に刻み込む役に立つと確信している。私の最初のころの課程やワークショップの卒業生たちに再会すると、何年も前に話したボトムアップ・リサーチの話を今でも話しているかと、笑顔で聞いてくる。私がボトムアップ・リサーチを勧めた理由を正確に覚えていなくても、ケーススタディの細部やニュアンスは覚えてくれているのだ。