朝は時間がないからご飯を食べないまま仕事に行く、という人も多いのではないでしょうか。しかし、NHK『きょうの料理』でもおなじみの医学博士・管理栄養士でもある本多京子氏は、「何を食べるかだけでなく、何をどのくらい、いつ食べるかが大切」と言います。本多氏の著書『60代からの暮らしはコンパクトがいい』(三笠書房)より、詳しく見ていきましょう。
何をどのくらい、いつ食べる?
毎日の生活の中で、私が欠かさず実践していることがあります。
それは、まず「食事の時間を決める」ということ。そうすることで、その日の予定をスムーズに立てられ、体調もよくなります。
時間がないからごはんが食べられないとか、とりあえず仕事がひと区切りしてから食べる、という人がいますが、私は逆だと思います。まず食事の時間をきちんと決めて、その間にやるべきことを効率よくやるのです。
このスタイルは、私は若いときから変わりません。
なぜなら、ちゃんと食べなければ健康が保てませんし、下手をすると病気になってしまうからです。元気でなければ頭も回転しませんし、いい仕事ができるとは思えないのです。
朝食には「金の価値」がある
いい状態でものごとに取り組むためには、体調をよくしておかなければなりません。体調の決め手は、やはり「食事」です。何を食べるかだけでなく、何をどのくらい、そして「いつ」食べるかが大切です。
ちょっと難しくなりますが、人間の脳の中には“体内時計”があります。体内時計は、1日24時間ピッタリではなくちょっと多めの時間でリズムを刻んでいます。朝の光が目の網膜から入ることで、体内時計が毎日リセットされるのです。そのため、朝寝坊をしていると、「脳のリズム」と「暮らしのリズム」がどんどんずれていってしまいます。やがて、自律神経のバランスも悪くなります。
そうならないために、朝、目覚めたら窓を開けて、太陽の光を浴び、朝食を摂る。これによって体内時計をリセットするのです。
だからこそ、毎朝なるべく同じ時間に起きて、同じ時間に食事をする必要があるのです。
朝は食べないほうがいいという説を唱える人もいるようですが、脳と体のリズムを考えたら、それはよくありません。やはり、“朝食は金の価値”なのです。
夕方の余裕のために「保温調理鍋」が活躍
ちなみに、私の1日の流れは、こんな感じです。
3階のワンフロアに私が住んで、1、2階は賃貸です。つまり私が大家さん。
朝は7時頃までには起きて、7時半にはゴミ出しと、大家さんとして建物の階段などの掃除です。それから朝食の支度をします。
朝食は、具だくさんの野菜スープと、自家製のカスピ海ヨーグルトに果物を2、3種とグラノラを混ぜたもの、そしてたっぷり牛乳が入ったカフェオレを飲みます。お米やパンは食べません。
それから洗い物をした流れで、夕食の下ごしらえ。
ある共働きの若い女性が言っていましたが、忙しく帰ってきて、短時間で夕食をつくろうと思うと、いつも肉野菜炒めになってしまうのだとか。
私も午前中に外出予定があるときは、難しいのでよくわかりますが、朝、ごはんを食べたあとのタイミングで、1品だけでも下ごしらえができていると、やはり夕方の余裕が違います。
スープをつくっておくことも多いですね。保温調理鍋はとても便利で、朝、野菜を入れておけば熱が通ってやわらかくなるので、夕方は味つけするだけで、いろいろな具だくさん汁に変身します。ある日のスープメニューを紹介しましょう。
〈せんべい汁もどき〉
朝、ささがきゴボウ、にんじん、きのこ、ネギなどと、冷凍しておいた鶏肉をだしでさっと煮て、保温調理鍋に入れます。ここでは味はつけないままです。
夕方、さば水煮缶を缶汁ごと加え、めんつゆ少々で味つけ。
せんべいを割って加え、さっと煮ます。
さば缶の缶汁がおいしいだしになり、せんべいのモチモチ感が味わえます。