勉強する際に付箋やマーカーを引いてインプットする人は少なくないのではないでしょうか? しかし、大人の脳の使い方としては少々非効率のようです。果たしてその理由とはいったい何なのか、著書『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)より、 加藤俊徳氏が解説します。
大人になると、付箋を貼っても線を引いても覚えられない!?…学生時代とはちがう「大人の記憶力」がアップするヒント【脳内科医が解説】
脳は命に関わる重要な情報を記憶する
勉強する上で強化したい記憶力について正しく理解するためにも、脳の記憶システムについてお話をしておきましょう。
大前提として、脳は記憶するよりも忘れるほうが得意です。
脳には1ペタバイトともいう膨大な記憶容量があると言われていますが、見聞きしたものをすべて記憶していたら、あっという間に容量オーバーになってしまいます。
また、脳は身体の中でも膨大なエネルギーを使い、大量の酸素を消費する器官であるため、できるだけ省エネモードで働きたがるという特性があります。
だから脳は、重要と判断したもの以外はどんどん忘れていくことで、効率よく頭を働かせたがっているのです。
私たちが目や耳から集めた情報は、いったん、脳の「海馬」へと送られます。記憶は大きく「短期記憶」と「長期記憶」に分けられますが、海馬が担当するのは短期記憶。
短期記憶は、いわば、記憶の一時的な保管庫のような存在です。
そして、保管庫であると同時に、保管庫の管理を一任された記憶の“調整役”としての役割も持ち、短期記憶から消去するものと長期記憶として残すものを選別しています。
海馬はタツノオトシゴを横向きにしたような形の小さな器官ですが、その役割の大きさは調整役と呼ぶにふさわしく、記憶力を上げていくためには海馬に長期記憶へとつながるルートの鍵を開けてもらう必要があるのです。
ところが、海馬はすぐに居眠りしやすく、サボりやすい性格です。
本来、そんな海馬が長期記憶に残そうと覚醒するのは、自分が生き延びる上で必要な危機や命に関わるような重要な情報です。
英文法も法令も計算式も海馬からしてみれば何の魅力も感じません。
そこを何とかして、海馬に「やばい! 重要だ」と思わせて長期記憶へと送り込む!
それが、大人の暗記法のヒントでもあります。
これから詳しくその方法を解説していきます。