優雅な「年金暮らし」は過去の話

河西氏のような50代クレーマーが増えた背景には、高齢サラリーマンに対する会社の処遇が悪化している事実があります。

この国の会社は「雇用を守る」ことを大切にします。簡単に従業員をレイオフする欧米の会社と比べて、その家族経営的態度は立派ですが、しかしながら「雇用を守る」のは稼ぎがあるからできること。収益力が落ちた会社で「待遇が悪くなる」のは仕方ありません。

かつての栄華を誇った巨大メーカーで役職定年制が導入されたり、年功序列賃金の見直しが行われているのは必然の流れでしょう。日本の会社がかつての輝きを取り戻すならともかく、これからも業績低迷が続くとしたら、高齢社員の冷遇は止まらないことでしょう。では河西氏のような50代はどうすべきなのでしょうか?

定年を控えたシニアが選ぶべき道は…

会社勤めにはいつか「定年」がやってきます。定年の日をもってサラリーマンを引退し、その後は悠々自適な隠居生活を送る──これまではそれが可能でした。しかし、もはやそれは「過去の話」と考えたほうがいいでしょう。

・少子高齢化が進んで財政が厳しい国の社会保障制度

・収益力が低下して高齢者の面倒をみられない会社

・寿命が伸びて定年後も長く生きる本人

これらを考え合わせると「定年まで同じ会社で働いて、その後は年金生活」の常識は崩壊寸前です。だからといって定年前に募集される早期退職に応じ、転職することもそれほど簡単ではありません。

そこで私は「定年後フリーランス」という方法を提案したいのです。

田中 靖浩

作家/公認会計士