自宅でお店のようなコーヒーを飲みたいと思っている人も多いのではないでしょうか? 奥が深いコーヒーの世界……少しの工夫でいつものコーヒーがさらに美味しくなるかもしれません。家庭でも挑戦できる美味しいコーヒーの淹れ方について、著書『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より、畠山大輝氏が解説します。
コーヒースケールが必須なワケ
コーヒースケールは、豆やお湯の量だけでなく、ドリップ中の経過時間(秒)も確認できるはかりです。差し当ってはキッチンスケールとキッチンタイマーなどでも代用できますが、いずれはコーヒー専用のスケールを手に入れることをおすすめします。専用品は高精度で反応速度が速く、より正確にコーヒーを抽出することができます。
コーヒー豆を挽くためのミル(グラインダー)は、手動式(手挽き)と電動式がありますが、それぞれピンからキリまで価格差が大きく、豆を砕く刃の作りなどの仕様がコーヒーの味を左右するので、しっかりと選ぶ必要があります。
メジャーカップは豆をすくうためのスプーンです。ドリッパーに樹脂製のタイプが付属しますが、こだわるのであれば、真ちゅうやステンレスのタイプを選ぶこともできます。
キッチン温度計は、お湯の温度を測るために使います。コーヒーを淹れるときのお湯の温度は味や香りに大きく影響を与えるので、正確に測れることはもちろん、お湯に差したときに温度が素早く表示されるもの、温度の目視がしやすいものを選びましょう。
ペーパーフィルターに2回湯通しをする理由
ここからは淹れ方の基本を解説します。
ドリッパーにペーパーフィルターをセットしたら、コーヒー粉を入れる前にペーパーにお湯を回しかけます。これはペーパーの原料となるパルプや木材に由来する匂いを取るための作業。いわばペーパーの湯通しともいうべきプロセスです。
この匂いは、人によって感じ方が違うので、特に気にならないという人は、この工程を省いてもらっても構いません。ただ、作業自体はそれほど大変なことではないので、「ちょっと匂いが気になるな」と感じる人は行ったほうがいいでしょう。私の場合は、1度お湯が落ちきった後にもう1度お湯をかける、合計2回の湯通しを行っています。
これを行うことで、ドリッパーの中でペーパーフィルターが安定するほか、ドリッパーやサーバーを温めておけるというメリットもあります。
特にドリッパーは、あらかじめ温めておくことで、抽出する際のお湯の熱がドリッパーに奪われにくくなるので、意図した湯温で抽出することができます。
コーヒー粉は平らにならしてから蒸らす
ペーパードリップでは、1投目にコーヒー粉の蒸らしを行います。蒸らしのお湯の量は、使うコーヒー粉の倍量が目安。私の「基本のレシピ」の場合、粉量が15グラムなので、その倍量の30ccのお湯を蒸らしに使います。
蒸らしのお湯をかけて30秒待つ間に、コーヒー粉の中にあるガスが抜け、2投目以降のお湯がコーヒー粉の1粒1粒にしっかりと浸透しやすくなります。
蒸らしで大事なのは、コーヒー粉にお湯をまんべんなくかけること。粉の1部が濡れて、1部が乾いているようでは、2投目以降の抽出にばらつきが出てしまいます。
さらに、蒸らしのお湯を投入する前に、コーヒー粉を平らにしておくことが大切です。ドリッパーを振ったり、側面をトントンと叩いたりして、表面をならしましょう。その際、強く振ったり叩いたりするのはNG。豆を挽いたときに出る「微粉」が粉の層の下に集まって、ペーパーの目を詰まらせる原因になります。あくまでやさしく、ふんわりとしたコーヒー粉のベッドを作ってやるイメージで行いましょう。
お湯は真ん中を多め、外側を少なめに注ぐ
私の「基本のレシピ」では、コーヒーの粉面にお湯を注ぐときは、真ん中を多めに、外側を少なめにします。
最初に粉面の中心からお湯を注ぎはじめ、だんだん外側へと円を広げるように注ぎ、外側までいったらまた中心に向かって円を狭めていきます。1投目の蒸らしから3投目までは、基本的にこの動きを繰り返します。4投目以降は円の大きさを少し小さく、500円玉程度にします。
これは、コーヒーの粉の層が中心にいくほど厚く、外側にいくほど薄くなる円すい型のドリッパーを使用しているためです。台形型ドリッパーや円筒型ドリッパーなど、使うドリッパーの形状によっては必ずしも当てはまらない場合もあります。
そのほか、お湯を注ぐ回数や、注ぐときのお湯の太さ、粉面に対するお湯の角度などによっても、コーヒーの味や香りは変わってきます。