「慢性炎症」と老化の関係

AGEと並んで近年注目されているのが慢性炎症です。

炎症という言葉は日常生活でもよく使いますね。扁桃炎でのどがはれたとか、食中毒による胃腸炎、子どもに多い中耳炎、高齢者に多い関節炎など、赤くはれて痛みと熱を伴う症状を引っくるめて炎症と呼んでいます。

原因はさまざまで、病原菌の侵入、ケガ、やけどの他に、放射線を浴びたり、シャンプーでかぶれたりして皮膚炎になることもあります。つらい炎症は、じつは免疫細胞が体を守るためのしくみです。免疫細胞は血液の中を流れているため、体のどこかに異変が起きるとその場所の血管が広がって血液が集まります。免疫細胞を呼び寄せるためです。問題のある場所が赤く、熱っぽくなるのは血液がたまるからです。

到着した免疫細胞は血管から周囲の組織に出ていき、病原菌や、傷ついた細胞を取り除くことで体がすみやかに機能を回復できるようにしています。このとき血液から水分も一緒にしみ出すため、周囲の組織がむくみ、全体にはれぼったくなります。修復作業が終わると組織は元に戻り、赤みもはれも消えていきます。

以前から、動脈硬化、肥満、がん、アルツハイマー型認知症では弱い炎症がだらだら続くことが明らかになっていました。先ほどあげた原因のはっきりした炎症とは異なり、これといった原因が見当たらないのに炎症とかかわる反応が体内で起きて、これがずっと続くのです。どこかが目に見えて赤くなったり、痛んだりするようなこともありません。

さらには、老化によっても慢性的な炎症が起こり、百寿者を含む高齢者で調査すると、年齢が上がるにつれて炎症とかかわる反応が強くなることがわかりました。しかも、慢性炎症が強い人のほうが炎症が弱い人より先に亡くなる傾向が見られました。

日本とイギリスの合同研究からは、炎症の数値が低い高齢者は認知機能が長く保たれることが示されています。また、百寿者の子どもは慢性炎症の程度を示す数値が低いこともわかりました。何か遺伝が関係するのでしょうか? しかし、なぜ慢性炎症が起きるのか、どうすれば慢性炎症を防ぐことができるのかははっきりしていません。

考えられる原因として、古くなった細胞の蓄積があります。老化して機能を果たせなくなった細胞や死んだ細胞は、通常であれば免疫細胞がやってきてきれいに取り除きます。それが、老化により免疫細胞の働きがおとろえて掃除が間に合わず、古い細胞がたまってしまうのではないかというのです。古くなった細胞は周囲に炎症を起こすため、次第に病気と老化を進行させるおそれがあります。



奥田 昌子
医師