アメリカの球団レッドソックスとの共通点

藤村さんは、ミスター・ジャイアンツとミスター・タイガースの違いを鮮明に示してくれたのだと思う。それは「巨人軍は紳士たれ」と、長髪や金髪、ヒゲを禁止したジャイアンツに対し、阪神は、”野武士”や“猛虎”という言葉で表現されるような豪快な強さであり、カリスマ的な迫力だ。

私は、ボストン・レッドソックスという球団のチームカラーが大好きである。現在は吉田正尚選手が所属し活躍しているチームだ。ニューヨーク・ヤンキースという規律のあるエリート軍団とは対照的だ。

2013年のシーズンは、多くの選手が髪やヒゲを伸ばし、1人ひとりの打撃フォームも個性的で、デビッド・オルティーズのような巨漢のパワーヒッターがいたり、上原浩治のように感情を露あらわにマウンドで吠えまくるストッパーもいた。

"世界一"となった2013年のシーズンは、ジョニー・ゴームズとマイク・ナポリという2人の選手が、春季キャンプからヒゲを伸ばし始め、そのうちそれがチームの快進撃と共に全選手に波及して、球団サイドもそのヒゲブームに便乗。

ヒゲを生やしてきたファンには1ドルで入場可能という"ヒゲチケット"まで販売して、フィールドだけでなくフェンウェイ・パークのスタンドもヒゲで埋まった。チームの個性がファンを巻き込んで、社会現象まで起こす。全米屈指の人気球団だ。

関西圏だけでなく、全国に虎フィーバーという名の社会現象を起こして日本一となった85年の阪神タイガースに、どこかそのチームカラーが重なる。

私は最低限の規律やモラルを守り、社会的にも人道的にも他人に迷惑をかけないのであれば、決して個性を見失わず、ファンから愛着を持たれるレッドソックスのような球団がベストだと考えている。阪神は、日本版レッドソックスであってほしいのだ。

掛布雅之

プロ野球解説者・評論家