掛布雅之が語る大山悠輔の野球の特徴

大山悠輔選手のバッティングが覚醒した感がある。元々打ちに行ったときに、頭が前に突っ込んでしまっていた。頭が前に突っ込むと当然目もボールに近づいていくことになる。

ボールに目が近づいていくと、バットを大きく振ることができなくなる。頭が突っ込まなくなって大山は、すごく前のフォロースルーが大きくなり、打球の飛距離も伸びていっている。頭が後ろに下がるような感じでバットを前に放り出せるので、目とボールとの距離がすごくとれて、バットを遠くへ放り出せるのだ。

それだけ自分の状態がよくなると、相手投手の攻め方も変わってくる。

簡単に初球からストライクを投げてはこない。外のスライダーで誘ってくるか、外のストレートやボール気味のストレートを投げて誘ってくる。アウトコースを見せてインコースで起こしにきたりもする。両サイドの出し入れで揺さぶってくるのだ。

そして、アウトローのボール球で空振りか引っかけさせる配球をしてくるのだが、その配球に対しても大山は頭が前に突っ込まなくなったことで見極められるようになった。

目を近づけると意外に両サイドのボールを追いかけてしまうものだ。でも顔が止まっていると、両サイドのボールを追いかけずに見極められる。大山自身の四球数は2022年59個だったが、23年は99個と飛躍的に増えた。ボールを見極め、打つボールが来るまで待つ我慢もできているし、かといって大山の特徴であるファーストストライクに対する積極性も忘れていない。

そういう意味ではストレート系で攻めてくるパ・リーグのピッチャーと大山のタイミングは合うのだ。2022年6月3日の日本ハム戦での1試合3本塁打は全部ストレートだった。また、大山は失敗の内容がすごくよくなっている。それを見たときに、大山は下降線を辿るような状態にはならないのではないかと感じた。

大山の守備力も向上している。相手打者の一、二塁間を抜けようかという打球を見事なグラブさばきで好捕している。サードを守っていたからこそ、左右の動きも上手い。大山はサードを守っているときには、送球の不安があったのかもしれないが、ファーストであれば、その不安はなくなる。その守りのリズムがバッティングにもつながっているのだ。

もし一塁しか守れない新外国人が入ってきたとしても、大山を一塁から動かすのは反対だ。バッティングも崩れていくかもしれない。

阪神が勝つためにはファースト大山で固定する。守る野球はすごく大切である。打っても3割だが、守りは9割9分の確率で勝ちにつなげられるからだ。

近本選手、大山選手はバットのヘッドが投手方面に倒れ、打つ瞬間にそのまま手首を最短距離で出して打つイメージだ。

大山選手の魅力は、何よりも近本選手と同じくシーズンを通して戦える体力があることだ。2022年シーズンは23本塁打を放つ。生え抜き選手で3年連続20本塁打以上というのは21世紀初の快挙だった。
 
23年は19本塁打だったが、大山選手は、岡田監督の考える中軸としての役割を果たしているといえるだろう。23年はセ・リーグ打撃部門での四球数はトップである。大山選手に言いたいのは、3球目までのボールの見極めをさらにしっかりとするということだ。