選手を通して見る「つなぐ意識」で打席に臨んだ結果

2023年の阪神リーグ優勝の要因は何かと問われれば、多くのファンは強力な投手陣だと答えるだろう。

日本一となった1985年の阪神タイガースも、シーズン219本塁打が話題となったが、基本は「守り勝つ野球」だった。

23年は、本塁打数こそ少ないものの、打線においても85年と同じものがあった。それは「つなぐ意識」である。4球数が優勝の要因としてメディアにクローズアップされたが、4球というのは、次の打者につなげる気持ちから生まれるものである。4球を選ぼうと思って打席に入る打者はいない。4球で1塁に行こうと思った時点で、消極的な気持ちが芽生え、バットが出てこなくなってしまうのだ。

4球という結果だけを見るのではなく、その過程で打者がどのような意識をもち、打線になったのかを注目すべきだろう。

23年は、8番の木浪聖也、1番近本光司、2番中野拓夢が見事に打線として機能した。巨人の原辰徳監督(23年シーズンで退任)は「3番、4番、5番のクリーンナップが打つのは当たり前じゃないですか。1番嫌なのは8番からつなげられて上位打線に回って取られる1点。これは結構効くんですよね」と言っていた。

また、4番の大山悠輔は、本塁打こそ20本に満たないものの、最高出塁率のタイトルを獲得した。4番打者で出塁率トップとは、いかに大山がつなぐ意識で打席に臨んでいたのかを表す数字だ。そして勝利打点もかなり多い。シーズン前に岡田監督は、大山に勝利打点王(81年〜88年まで。89年〜2000年まではセ・リーグ特別賞)になることを厳命していたのだ。「あのタイトルはものすごい価値あったと思うけどな。勝利を決めた打点やからな」と岡田監督は、シーズン前に報道陣に語っていた。

佐藤輝明は、苦しんだ時期もあったが、8月、9月は打率3割以上を打ち、復調してきた。そして、セ・リーグ優勝を決めた9月14日、佐藤の打球が、バックスクリーンに放たれた。