高齢者の住まいとして人気が高まる「老人ホーム」。選ぶ基準はさまざまで、できれば見学をして入居者自身はもちろん、その家族のニーズに合うところを見つけることが肝心です。見学をしないで決めると、思いもしない事態に直面することも珍しくありません。
悔やんでます…年金18万円の70代父「人気老人ホームに入居」も、たった1ヵ月で退所した「まさかの理由」

老人ホーム選び…見学はいくつしている? 何を見てる?

入居条件と費用を抑え、実際にはきちんと見学することが重要。株式会社Speee/ケアスル 介護『介護施設の施設見学・体験入居に関するアンケート調査』によると、施設見学・体験入居を実施した施設数は、「1ヵ所」が最も多く21.3%。つづいて「ゼロ」が20.3%、「2ヵ所」が20.0%。「10ヵ所以上」と、もはや見学マニアと呼べそうな人も3.0%いましたが、5人に1人は見学をしないで施設への入居を決めています。認知症の症状が進行してしまっている、介護度が重く見学が負担など、さまざまな事情がありそうです。

 

また見学時にチェックしたところで最も多いのが「スタッフの対応・スタッフの質」で60.7%。「居住スペースの過ごしやすさ」59.7%とともに、半数以上の人がチェックしたポイント。また「医療・看護サポート体制」「介護体制」「食事」「浴室・入浴設備」「面会体制」「共有スペースの使いやすさ」が3割を超える人がチェックしています。諸先輩のチェックポイントを参考に、自身やその家族が譲れないポイントをチェックしていくことが重要です。

 

前出の女性の場合は、きちんと見学をしたのかといえば、そうではなく、頼りにしたのは「ランキング」だといいます。いまネット上には「XXな老人ホームランキング」といった人気ランキングがいろいろ。老人ホーム選びの基準になっています。女性は施設を探す際のポイントは

 

・女性宅から車で30分程度で面会に頻繁にいける施設

・介護体制、医療体制がしっかりしている施設

・父親の年金(月18万円)で月額費用の大半を賄える施設

 

この3つ。たまたま目にした「サポート充実の老人ホーム」のランキングで、近くにあるホームが上位だったので問い合わせところ、ちょうど「空きがある」と入居を決めたといいます。

 

――いいところを見つけたわ

 

と喜んでいたのも束の間、ほどなくして父の様子に違和感を覚えるようになったといいます。

 

――大丈夫⁉ きちんと食べてる?

 

話を聞いたところ、「食事が口に合わない……」と遠慮気味にいってきた父。老人ホームに入所したとはいえ、父は健康そのもの。「食べることが趣味」というほど、食にうるさい人だったといいます。ところが入所した施設は要介護度の重い人が多く、食事の味付けは健康体の父には薄く、また咀嚼しやすいようにと柔らかく噛み応えのないものばかり。しかし「せっかく娘が探してくれたホームだからと不満を口にすることもできず、段々と食事が喉を通らなくなってしまったといいます。

 

――健康な人も入れると書いてあったのに……まさか要介護の人ばかりの施設だったなんて

 

と、きちんとホームを見学しなかったことを大後悔。そして「このままでは、健康な父がやせ細ってしまう……」と焦った女性は、すぐに父親を退所させ、改めて父親とともに老人ホームに見学にいこうと考えているといいます。

 

[参考資料]

株式会社Speee/ケアスル 介護『介護施設の施設見学・体験入居に関するアンケート調査』