「投資の神様」に学ぶ資産の増やし方
さて、日経平均株価が約33年ぶりの高値を付け、株式投資に関心を持つ人や保有株式の買い増しを考える人が増えているようです。
資産形成にとって大事なのは「目先の相場変動に左右されることなく将来的に成長が期待できる銘柄を保有し続けること」とよくいわれますが、著名な投資家2人の手法から資産の増やし方を学んでみましょう。
投資をしたことのある人なら多くの方が知っている「投資の神様」といわれるウォーレン・バフェット氏とピーター・リンチ氏。この2人はどんな方法で資産作りをしたのかを見てみましょう。
ウォーレン・バフェット氏は、アメリカの投資会社バークシャー・ハザウェイで会長兼CEOを務めています。株の運用で約3,281億ドルの富を築いたといわれる同氏は、まさに歴史に名を残す投資家といっていいでしょう。
1962年、バフェット氏は、当初綿紡績事業として創立されたハサウェイ製造会社を「実際の企業価値よりも安値」と確信し株を買い始めました。いわゆる「バリュー投資」の手法であり、さらに取得した株を長期に保有するのがバフェット流です。
バークシャーの保有株式のなかには、カード大手の米アメリカン・エキスプレス(アメックス)がありますが、こちらは1964年に購入、13億ドルの投資額は250億ドルまで上昇しています(上昇率19.4倍)。また、コーラの愛飲家としても有名で米コカ・コーラを1988年に購入、こちらも13億ドルの投資額は248億ドルまで上昇しています(上昇率19.1倍)。(2023年3月末時点)
アメックスに関しては実に詐欺事件(サラダオイル事件)に巻き込まれた時期での投資でしたが、将来性を信じ、このとき暴落した株価は割安と判断してアメックスの株式を大量に取得したことが大きな利益につながりました。
このようにバフェット氏は、単に割安な株を購入するのではなく、「将来の成長」に対する割安さを重視した「グロース投資」の手法も採用しています。
もう1人の有名な「投資の神様」はピーター・リンチ氏です。世界最大級の投資信託グループ企業であるフィデリティ・インベストメンツのファンドマネージャーで、1977年に運用資産1,800万ドルのマゼランファンドを13年間で140億ドルにまで増加させ(年間平均リターン29.2%)、世界最高の投資信託ファンドにしたという、驚くような実績で有名です。
リンチ氏の「自分が知っているものに投資しろ」という現代の個人投資家の間で有名な名言がありますが、「実際に食べたり飲んだりして美味しかった!」というタコスチェーンやドーナツの企業の株など、徹底的な企業分析により長期保有に値すると判断した企業の株を持ち続ける、といった手法で大きな利益を上げています。
「テンバガー」(10倍株)という言葉を作り出したのもリンチ氏です。企業の株式を割安なタイミングで購入し、長期で保有することで大きく増やす重要性を説いています。
2人ともコーラやドーナツなど身近で好きなものに将来性を感じ、企業分析により割安株を取得したあとは長期保有で大きく増やす、といった手法はよく似ていますね。
食料品や光熱費の値上げが家計を直撃していますが、2022年は25,000品目だった食料品の値上げも2023年には3万5,000品目を超えそうです。
人口減少による人手不足からの値上げも続きそうで、50代を過ぎた方には老後の生活に不安を感じる方も多いでしょう。都会でも一人暮らしの高齢者が急増するといわれるなか、住まいを含めて収入と支出のバランスや資産運用の方法について見直してみてください。
川淵 ゆかり(川淵ゆかり事務所代表、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
国立大学行政事務(国家公務員)後にシステムエンジニアとして、物流・会計・都市銀行などのシステム開発を担当。その後FPとして独立し、ライフプランやマネープランのセミナーのほか、日商簿記1級、CFP、情報処理技術者試験の合格経験を活かして、企業や大学での資格講座・短期大学や専門学校での非常勤講師としても勤める。