なにをおいてもまずは「賃料」、そして共益費、管理費など
最初に確認しておくべきは、賃料の金額となるでしょう。もっとも、賃料以外にも、共益費・管理費、看板料(店舗の外壁に設置された看板を掲載するための料金)といった費用が発生する賃貸借契約も多くあります。
また、返金されない性質の礼金や権利金の発生や、敷金・預託金のうち一定の金額が自動的に償却(返金されない)といった条項が設けられていることもあります。
賃料そのものは安くても、こういった費用を合算すると、合計金額が思ったよりも高くなる可能性がありますので、きちんと確認しておく必要があります。
また、更新料と契約期間の関係についても確認しておく必要があります。契約を更新するごとに更新料が発生する契約の場合、15年間で、5年契約の場合には更新料を3回支払えばいいのですが、3年契約の場合には5回支払うことになります。結果として、契約期間が短い場合には、実質的に支払う金額が高額となる点も確認しておく必要があるでしょう。
賃料増額規定…地価上昇に伴う増額等の記載はある?
次に、賃料増減額に関する規定も確認しておく必要があります。賃貸借契約には、通常、将来にわたって賃料の増減を請求することができる賃料増減額に関する規定が設けられています。そもそも、借地借家法32条は、
「土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」
と定めており、これと似たような内容が設けられている場合が多いのですが、たとえば、地価が上昇した場合には、自動的に賃料が増額するような特約が設けられているような場合などがあるため確認が必要です。
契約期間…中途解約に関する条項に注意
さらに、賃貸借契約期間と中途解約の関係についても確認が必要です。賃貸借契約書には、契約期間の途中での解約を認める条項がある場合もあれば、途中での解約を禁止する条項がある場合もあります。
例えば、賃貸借契約の期間が20年と定められており、賃貸借契約期間中の中途解約を禁止する条項がある場合には、例えば、契約期間の12年目くらいで賃貸借契約を終了したいと思っていても、残り8年間は契約期間が存続することになるため、賃借人が辞めたいときに辞められなくなる可能性があります。
契約の更新等について…「普通借家契約」と「定期借家契約」の違いを確認
また、借地借家法においては、賃貸人が、賃貸借契約の満了後に更新を拒絶する場合、及び中途解約条項に基づき中途解約をする場合にはいずれも、借地借家法28条において、
「建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明け渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。」
とされています。
そのため、普通賃貸借契約においては、契約期間が終了した場合、及び中途解約の定めがあってこれを行使する場合であっても、正当の事由があると認められる場合でなければ、契約は終了しません。
他方で、定期借家契約においては、契約期間の満了によって賃貸借契約は終了し、再契約を行うかどうかは賃貸人の裁量となります。したがって、契約の更新等にあたっては、普通借家契約と定期借家契約の違いを確認しておく必要があります。
原状回復について…「すべてスケルトンにして明け渡し」などの規定もある!
最後に、賃貸借契約が終了したときの原状回復義務を誰がどのように負担するのかを定めている条項についても留意が必要です。
民法621条本文は、
「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。」
とされており、通常の使用収益によって生じた損耗や経年変化については賃借人の原状回復義務から除かれております。
しかしながら、特約で民法の規定と異なる規定を設けることも有効であると解されており、例えば、上記の通常損耗や経年変化も賃借人負担とする規定や、居抜きで借りた物件について退去時にすべてスケルトンにして明け渡さなければならないとする規定もありますので、十分な確認をしておく必要があります。
山口 明
日本橋中央法律事務所 弁護士