(※写真はイメージです/PIXTA)

元々は軍事戦略理論として提唱された「ランチェスター戦略」は、ビジネス戦略として体系化され、多くの有名企業の競争戦略として採用されてきました。別名「弱者の戦略」とも呼ばれ、新規開業クリニック(=弱者)における勝ち残りを考えるうえで、非常に重要な示唆を与えてくれます。本記事では、いくつかのポイントをご紹介します。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

「限定診療圏、高シェア取り」がランチェスター戦略における目標

ランチェスター戦略では、競合相手との競合局面(市場・商圏ともいいますが、クリニック開業シーンにおいては〈診療圏〉と呼びます)において、シェア(市場占有率)1位を獲得することを目指します。

 

 

また、このシェア1位の者を「強者」、それ以外の者を「弱者」と表現します。ただし、シェア1位であっても、市場シェア26.1%未満の場合は、原則として強者とはみなしません。そして、ランチェスター戦略では、強者と弱者それぞれに適した「戦い方」があると説かれています。

 

上述した定義から考えれば、これから新規開業するクリニックはすべて弱者であるといえます。現在は有名な大企業であっても、初めはみな弱者です。そのような弱者がとるべき戦略が、ランチェスター戦略です。

 

それでは、弱者である新規開業クリニックはどのように戦うべきなのか、考えていきましょう。

 

①弱者は「局所優勢主義」で戦うべし

"寡兵よく大軍を破る"という言葉があるように、歴史をたどれば弱者が強者を打ち破った例は枚挙にいとまがありません。その要諦はランチェスター理論によって説明することができます。そしてそのポイントのひとつが「局所優勢主義」です。

 

孫子曰く「十をもって一を攻めよ」。日露戦争時の海軍参謀・秋山真之が日本海海戦でとった作戦「丁字戦法」の原点である村上水軍の古戦法「わが全力を以って敵の分力を撃つ」。これらに通じる思想が「局所優勢主義」です。"ここで勝つ"という局面を定め、そこに対して戦力を集中的に投下することこそ、弱者の戦い方です。

 

新規開業クリニックが犯しがちな失敗事例として、自院のコンセプトを明確化しないまま、必要のない医療機器や設備に投資し、結果的に破綻してしまうということがあります。これは正に、弱者が弱者の戦い方をとらなかった故の失敗と言えるでしょう。

 

 

②局地戦における公式:戦闘力=武器性能×兵力数

それでは、もう少し具体的にこの「局所優勢主義=局地戦」の考え方について触れていきましょう。ランチェスター戦略は大きく、「弱者の戦略(第一法則)」と「強者の戦略(第二法則)」に分けられます。本記事では、この第一法則に焦点を絞ります。

 

【第一法則】弱者の戦略の公式

戦闘力(競争力)=武器性能(質)×兵力数(量)

 

非常にシンプルな考え方です。同じ武器性能であれば兵力数が多い方が勝ち、兵力数が同じであれば、武器や練度が優れている方が勝ちます。上述した日本海海戦の「丁字戦法」は、戦艦同士の砲撃戦という局面において、数的優位を作り出すことに主眼を置いた戦法でした(もちろん海戦前に十分な訓練により練度を高めた日本と長期遠征により疲弊したロシアといった質的な差もあったことと思います)。

 

さて、この公式を新規開業クリニックの観点で考えるとどうでしょうか?

 

武器性能=質的要素とは、開業医であるあなたの医学的知識・専門性や診察力はもちろん、営業時間や診察にかかる時間、スタッフの応対品質、物件の立地、アクセスのよさ等も含まれるといえるでしょう。

 

また、兵力数=量的要素とは、単純に医師の数(2診3診体制等)、自院で可能な検査の種類数、待合室の広さ・座席数や駐車場台数等が考えられるでしょう。

 

新規開業クリニックにおいては、この兵力数=量的要素で圧倒的な差をつけるということは、現実的ではないでしょう。そのため「武器性能の向上」が新規開業クリニックの至上命題といえます。そして、武器性能は競争相手との徹底的な「差別化」によって向上します。

 

この「差別化」の考え方については、別コラム【コスモス薬品のビジネス戦略に学ぶ新規開業クリニックの差別化戦略】でも詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

 

競争環境は変化する!開業前の事業構想を入念に練りましょう。

開業前には、必ず「診療圏調査」を実施されることでしょう。

 

ここで忘れてはいけないのは「競争環境は常に変化する」ということです。今現在の診療圏調査が示す推計患者数がよいからといって、安易に開業地を決定してはいけません。将来的に起こり得るマイナスの変化について想定すべきです。

 

とくに一度決定したら容易に変更がきかない要素や自らの努力だけではどうすることもできない外的要因の変化については、将来的な予測を立て十分検討すべきでしょう。診療圏内の人口動態、社会保険制度や診療報酬改定の方向性については、必ず理解しておくべきです。また、競合となるクリニックが自院の診療圏内に参入してくる可能性についても考えなければなりません。

 

一度決定したら容易に変更がきかない要素の代表は、やはり不動産です。今後は、これまでにも増して「よりよい物件で開業すること」の重要性が増すでしょう。依然として、自然と多くの人流が見込まれるターミナル駅周辺や都市部の開業物件が人気ですが、当然ながら競争環境の変化も激しいことが予想されます。そのようななか、自院が高い競争力を保ちつつ診療圏内で高シェアを獲得し続けることは、容易ではありません。

 

一方で、郊外に目を向ければ、競争環境も比較的緩やかで、外的要因の変化に強い物件も見つかりやすいのではないでしょうか。

 

とくに、コスモス薬品が開発するドラッグストア併設型クリニックは、ローコストで高い競争力(差別化)が実現でき、将来にわたってもその優位性の保持が期待できます。少しでもご興味をお持ちであれば、ぜひご相談・お問合せください。