乾癬にはどんな種類がある?
乾癬は症状やそのあらわれかたの違いにより、尋常性乾癬、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)、滴状乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬の5種類に分類されます。また、患者さんの状態によっては、他の乾癬へ移行したり、併発することがあります。
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
乾癬のなかでもっとも多く、全体の約9割を占めるのが尋常性乾癬です1)。一般に「乾癬」といえば、尋常性乾癬を指します。皮疹は、頭皮や髪の生え際、ひじ、ひざ、臀部、太もも、すねなど外部からの刺激を受けやすい部位でよくみられますが、それ以外の部位にも皮疹が出る場合があります。最初は直径数mm程度の小さな皮疹から始まり、次第に乾癬特有の局面を形成して、紅斑になります。
乾癬の発症原因は今のところ明確になっていませんが、遺伝的素因と環境因⼦の相互作⽤により、からだの免疫システムに異常が⽣じることで発症すると考えられています。
また、最近の研究から、乾癬患者さんの免疫システムの異常にTNF-α、IL-17、IL-23などの「炎症性サイトカイン」という物質が重要な役割を果たしていることがわかってきました。詳しくはこちらで述べていますのでご参照ください。
乾癬性関節炎
監修:東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座 主任教授 朝比奈 昭彦 先生
乾癬性関節炎は近年増加傾向にあり、日本では乾癬全体の約15%に合併するといわれています2)。症状は関節リウマチに似ていますが、乾癬性関節炎では皮膚症状が先にあらわれることが多く、手先や足先に近い関節に痛み、腫れ、変形などが生じます3)。
乾癬性関節炎は、乾癬の皮疹に加え、末梢関節炎、体軸関節炎、付着部炎、指趾炎などが生じる複雑な病態をもつ疾患です。さらに、アキレス腱や足底部の痛みや腫れ、臀部や腰部の痛み(炎症性腰痛)、指炎・朝のこわばり、さらには爪の点状陥凹や爪甲剥離(爪乾癖)、被髪頭部の紅斑・鱗屑(頭部乾癬)などの症状も認められることがあります。
この乾癬性関節炎の発症には、こちらで詳しく述べている「TNF-α、IL-17、IL-23」などの炎症性サイトカインが関わっており、筋肉の伸び縮みによって腱が付着する関節付近の部位に機械的な刺激が加わることで、炎症性サイトカインの産生が増加し、炎症が起きると考えられています4)。
乾癬性関節炎の症状
●末梢関節炎:
手足の関節に痛みや腫れ、こわばりがみられます。特に症状が出やすいのは、第一関節(指先に一番近い関節)です。関節リウマチは、身体の左右に症状がみられるのに対し、乾癬の場合は左右のうち片方に症状がみられることが多いといわれています。症状が進むと関節が変形し、普段の生活に支障が出てしまうことがあります5)6)。
●体軸関節炎:
首や背中、腰などの関節に炎症がみられ、痛みやこわばりがあらわれます。運動によって痛みが軽くなったり、夜中など安静にしているときに痛みがあらわれるという特徴があります。症状が進むと、骨と骨がくっついて固まり、上を向いてしまうなど、動作に支障を来すような変形がみられることもあります。
●指趾炎:
指全体に腫れがみられ、ソーセージ指ともいわれます。特に、足の第3趾(中指)、第4趾(薬指)に症状がみられますが、手の指にもみられます5)6)。
●付着部炎:
筋肉が骨につく部位(付着部)に炎症がみられ、痛みがあらわれます。特にアキレス腱や足の裏の腱の付着部で起こりやすいといわれていますが、他にもひざや骨盤周りなど、どの部分でも症状がみられます6)7)。
滴状乾癬(てきじょうかんせん)
滴状乾癬は比較的若い世代に多く、全身に水滴大(数mm~1cm程度)の皮疹があらわれるのが特徴で、乾癬全体の約4%を占めるといわれています1)。かぜや扁桃炎などの感染症に続いて発症することが多く、溶連菌(ようれんきん)感染が多いとされています。
1~3ヵ月ですべての皮疹が自然に消退するような場合もありますが、慢性に経過して尋常性乾癬に移行する場合もあります。
乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
尋常性乾癬の皮疹が全身に広がり、全身の90%以上の皮膚が赤みを帯び8)、細かい鱗屑がはがれ落ちる状態を乾癬性紅皮症といい、乾癬全体の約1%を占めます9)。発熱や悪寒、倦怠感などを伴い、また、脱水や浮腫などの症状もみられます10)。
最初から紅皮症化した状態での発症は極めてまれであり、乾癬治療が不十分だった場合や科学的根拠のない治療を行った場合、もしくは治療を行わなかった場合などに発症することがあります。
膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
監修:藤田医科大学医学部 皮膚科学講座 教授 杉浦 一充 先生
乾癬のうち、発熱や倦怠感、皮膚の潮紅とともに無菌性の膿疱(うみを持った水疱)がたくさん現れるタイプのものを膿疱性乾癬といいます11)12)。膿疱性乾癬は限局型(発疹・膿疱が身体の一部に出ている状態)と汎発型(発疹・膿疱が全身に広がっている状態)に分類されます。
発症頻度は約1%で13)、尋常性乾癬の経過中に生じることもあれば、乾癬の症状がないのに突然生じることもあり、いったんよくなっても症状が繰り返されることがあります。膿疱性乾癬(汎発型)は、難治性であることや治療に急を要することなどから、厚生労働省が定める指定難病に指定されています12)。
膿疱性乾癬の発症にはIL-36というサイトカインが関わっていると考えられています。尋常性乾癬の症状がなく膿疱性乾癬を発症した患者さんの多くは、このIL-36という炎症性サイトカインの働きを抑える物質の機能が著しく低下していることが明らかになりました12)14)。
ただ、これらの機能の低下もすべての患者さんに認められるわけではなく、原因は現在のところはっきりとは分かってはいません。感染症や妊娠などを契機として、皮膚の細胞が分泌するサイトカインが高熱の原因となり、血液中の白血球を皮膚に呼び寄せて膿疱を形成すると考えられています12)。